全国初「県内バス・電車無料の日」なぜ実施? 他社の減収も負担 バス会社の壮大な挑戦
熊本市中心部の新バスターミナルと併設の商業施設オープンにあわせ、県内の路線バスや電鉄、市電が1日無料になります。ただの施設PRにとどまらない、今後の街づくりをにらんだ挑戦ともいえる取り組みです。
全国初「県内全域の公共交通無料」
九州産交バス(熊本市)の親会社にあたる九州産業交通ホールディングスが、2019年9月14日(土)を「熊本県内バス・電車無料の日」にすると発表しました。九州産交グループのバスはもちろん、熊本電鉄や熊本バスなど他社の路線バス、さらに熊本市電や熊本電鉄の電車まで無料で利用でき、各社の減収相当額は九州産交グループが負担するという大掛かりなものです。
これまで、関東の東急池上線や川崎鶴見臨港バスなどで、自社路線や沿線の魅力をアピールするため1日無料とした例はありますが、都道府県の全域で路線バス、電鉄、市電を無料化するのは全国でも初めてです。ただし今回、他県へ乗り入れるバス路線やJRの列車などは対象外となっています。
今回の取り組みは、後述する熊本交通センター跡地の再開発事業の一環として、九州産交グループが9月11日(水)に熊本桜町バスターミナルを、9月14日(土)に併設する大型商業施設「SAKURA MACHI Kumamoto(サクラマチ クマモト。以下「サクラマチ」)」を開業するのにともなうものです。熊本市内では渋滞の慢性化が深刻で、サクラマチの開業直後はそれに上乗せして多数の来店が予測されるため、公共交通の利用を促すことが直接の目的です。同グループは、「これを機に、公共交通の利用が、渋滞など社会的な問題解決の一助となりうることを再認識していただければ」としています。
しかし、自社の減収分を含め数千万円単位と見られる多額の費用を負担してまで、いちバス事業者がキャンペーンを実施する背景には、今後の街づくりをにらんだ深謀遠慮があると筆者(成定竜一:高速バスマーケティング研究所代表)は考えます。
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