全国初「県内バス・電車無料の日」なぜ実施? 他社の減収も負担 バス会社の壮大な挑戦

全国的に元気がない「中心市街地のバスターミナル」

 サクラマチは、人口約74万人の政令指定都市熊本の中心市街地、そのさらに中心部といえる立地です。この場所には1967(昭和42)年から2015年まで、一般バスターミナルとして国内最多の発着バース(乗り場、降り場)数を誇った「熊本交通センター」がありましたが、現在は仮ターミナルで営業しています。

 JRの熊本駅はというと、中心市街地の南西約2kmに位置しています。明治時代、城下町エリアを避けて鉄道(鹿児島本線)が建設されたため、その立地は若干「街はずれ」といった印象で、熊本駅から中心市街地へは、バスや市電に乗り換えが必要です。一方、城下町エリアの中心部に位置する熊本交通センターは、九州産交バスのほか、熊本電鉄、熊本バス、熊本市営バス(のちに熊本都市バスなどへ路線譲渡)の路線バスが、市郊外や県内外の諸都市から乗り入れる拠点として賑わい、敷地内には百貨店やホテルに加え、開業当時に全国で大人気だったボーリング場もありました。

 このような、商業施設を併設した中心市街地のバスターミナルは、地方都市では一般的です。岡山市の天満屋バスセンターや、鹿児島市の山形屋バスセンターなど、老舗百貨店がバスターミナルを設置しバス路線を誘致した例や、秋田市の長崎屋バスターミナル、新潟市の万代シテイバスセンターのように、バス事業者が都市開発を行い商業施設をテナントとして迎え入れた事例などがあります。

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開業当時の熊本交通センター(画像:九州産業交通ホールディングス)。

 しかし近年、これらのバスターミナルには元気がありません。中心市街地の集客力低下と、路線バスの輸送人員減少が同時進行しているのです。

 中心市街地の老舗百貨店や商店街は全国的に、郊外のショッピングモールへ買い物客を奪われています。とりわけ2000(平成12)年に大規模小売店舗立地法が施行されて以降、郊外にショッピングモールが続々と開業しました。大きな無料駐車場や、戦略的なテナント配置などが人気を集めた要因です。その結果、中心市街地が空洞化する「ドーナツ化現象」が進んでいます。そのうえ、当初は「街はずれ」だった鉄道駅周辺で、JR各社が商業施設を開発する例も全国で見られ、中心市街地は郊外と駅前の「挟み撃ち」にあっています。

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