外航貨物船「船長」の仕事を聞く 多彩な業務と船内生活、働き方&なり方、魅力は?

日本郵船の外航船船長に、日本と外国との物流を担うその仕事について聞きました。長期航海中の業務、船内生活、休日の過ごし方、仕事の楽しさや魅力、やりがいはどんなものでしょうか。またどう就職し、どう資格を取得するのでしょうか。

思っていたような仕事じゃなかった船長の「お仕事」

「船長」というと、その船でいちばん偉い人ということはイメージしやすいですが、たとえば航海が長期にわたる外航船の船長は、実際のところどのようなお仕事をしているのでしょうか。

 今回お話を聞いたのは、日本郵船の藤野晴久船長です。滋賀県出身で国立鳥羽商船高等専門学校を卒業後、日本郵船に3等航海士として入社。2006(平成18)年に船長へ昇進して鉱石船や原油タンカーなどに乗務、現在は同社エネルギー業務グループ副部長として“陸(おか)に上がって”勤務しています。特技はスキーでインストラクターの経験もあるそうです。

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「船乗りの敬礼はひじを下げるんです」と実演してくれた日本郵船の藤野晴久船長(2019年9月18日、乗りものニュース編集部撮影)。

――船員を目指したのはいつ頃で、どんなきっかけだったのですか?

 クルマや電車など、乗りものは小さい頃から好きでした。実家は農家だったのですが、肥料や家畜のえさなど輸入に頼っている現状を肌で感じていました。中学生くらいの頃でしたか、日本の食料自給率を考えた時に、「このまま農業を継ぐより、島国である日本にとっては海運が大切なのではないか」みたいなことを考えたんですよね。あとは、訓練で「日本丸」や「海王丸」みたいな帆船に乗れるのもかっこいいなと思いまして、商船高専(国立鳥羽商船高等専門学校)に入学しました。ほかの同級生と違って身内に船乗りや海運関係者がいないぶん、知識もないけど何の先入観もなかったので、まじめに勉強しましたよ。

――予備知識もあまりないままこの世界に飛び込んで、どうでしたか? 「船長」は思った通りのお仕事だったでしょうか?

 違っていましたね(笑)。「船長」って、ただ船に乗って操縦していればいい、と思っていたのです。飛行機のパイロットみたいなイメージですよね。でも、操船は、10ある船長の仕事のうちのひとつにすぎないんです。実際には、書類仕事や貨物の揚げ下ろしの計算、会社との連絡や乗組員の労務管理などが業務のほとんどの時間を占めています。

 複数の仕事のなかでも操船に関しては、失敗は絶対許されない。「ちょっと座礁しちゃったな」では済まないわけです。だから、10のうちの1だとしても、操船に勝る仕事はありません。

【写真】文字通り巨大船! 藤野船長が乗務していた原油タンカーの同型船

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