外航貨物船「船長」の仕事を聞く 多彩な業務と船内生活、働き方&なり方、魅力は?
やはり船長によってカラーはある!
――船長さん次第で、船の雰囲気は変わるものなのでしょうか?
もう、それが全てですね。船長次第でガラリと変わるので、船長のカラーが船のカラーそのものです。ひと口に船長と言っても、いろんなタイプの方がいます。真面目、明るい、厳しい……そういう性質によって、リーダーシップの発揮の仕方がまったく違います。私が航海士だった頃は、技術者としても人柄の面でも尊敬できる、実力がある船長に憧れたものです。口数が少なくても、この人についていきたいと思わせるかっこよさがありましたよね。昔はそうなりたいと思っていましたけど、私はしゃべるタイプですし、キャラに合わないまま、表面だけまねても意味はないですよね。自分は自分のキャラの中でがんばる、と思うようになりました。
――藤野船長の考えるこのお仕事の魅力を教えてください。
まずは、海技免状は国際ライセンスなので、世界のどこに行っても仕事ができること。それから、お金が貯まりやすいことですね。船に乗っているあいだは全くお金を使わないので、数百万円がそのまま手元に残ります。
何より、乗船勤務が終わると数か月のまとまった長い休暇がとれ、自分のやりたいことができるのがいい。スキーやサーフィン、航空機、バックパッカーなど、みんなそれぞれ自分の趣味を極めていますね。そういった意味で、レアな仕事だと思いますよ。
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笑いを交えてどんどん話しながらも、専門用語や分かりにくい言葉はサッとホワイトボードに書いて説明するなど、こちらの様子を常に気遣う優しさが印象的でした。こういうところが、多国籍の船員をまとめる人望とカリスマ性に繋がっているんだなあと、しみじみ。
航海中はテロや海賊など、危険と隣り合わせ。「安全な航海のためには、日本だけが平和ではダメなんです」という言葉に、船員を志した時から世界と日本の関係に目が向いていた藤野船長らしさを感じました。
●「船長」のお仕事:日本郵船 藤野晴久さん
・トーク力:☆☆☆☆☆knot
・車庫入れ技術:☆☆☆☆☆knot
・ワールドワイドビジョン:☆☆☆☆☆knot
・青春時代恋愛苦労度:☆☆☆knot
・おヒゲ指数:0knot(ただし航海中は☆☆☆☆☆knot)
(knot=ノット。船の走力単位)
【了】
Writer: 大西紀江(ライター/編集者)
静岡・伊豆出身のライター、編集者。乗りものオタクの総本山ともいうべき某出版社の編集を経て、フリーランスに。以来、自動車を中心に模型から時計まで、幅広く執筆&編集を手掛ける。象の調教師の免許あり。
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