エアバス50年、民間機だけじゃない巨大企業への歩みとは ヘリでは日本と深い縁も
日本との関係は?
エアバス・ヘリコプターズの前身であるアエロスパシエルのヘリコプターは、日本でも数多く導入されており、もうひとつの前身であるMBBも川崎重工業と双発ヘリコプター「BK117」の共同開発・生産を行なっていました。アエロスパシエル時代からの信頼に加えて、BK117の生産が現在も継続されているため、エアバス・ヘリコプターズのヘリコプターは、2017年度には日本の民間機市場で54%(BK117を含む)を超えるシェアを確保しています。
一方で旅客機部門は、日本の航空産業がボーイングと強い結びつきを持っていることなどから長年、日本市場では苦戦を強いられてきました。しかしA320を運航するLCC(格安航空会社)の誕生や、JAL(日本航空)の「A350XWB」、ANA(全日本空輸)の「A380」導入などによって、近年では日本市場でのシェアを急激に増やしています。エアバスは、2020年には日本国内市場のシェアが30%近くに達すると見込んでおり、長期的には50%台を目指す方針を明らかにしています。
ヘリコプターでは民間機市場で50%を超えるシェアを確保し、旅客機でも急激にシェアを拡大しているエアバスが、日本市場で唯一苦戦しているのが防衛部門です。日本はアメリカと同盟関係にあることから、輸入する防衛装備品にはアメリカ製が多く、防衛装備品の同盟国・準同盟国との共通化を進める安倍政権の誕生以降、その傾向はさらに強くなっています。
ただ、エアバスもこの状況にただ手をこまねいている訳ではありません。たとえばエアバス・ヘリコプターズが開発を進めている無人ヘリコプター「VSR700」を海上自衛隊に提案するにあたって、国内企業と協力する方針を明らかにしています。
防衛装備品の同盟国・準同盟国との共通化は国内企業の受注減少も招いており、日本の防衛産業はいま、大きな曲がり角を迎えています。エアバスはこのような状況にある日本の航空宇宙防衛産業との協力強化によって、防衛部門のシェア拡大を図る構えを見せており、今後の推移が注目されます。
【了】
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。
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