戦艦「大和」の3連装砲塔は「駆逐艦1隻」より重い!この巨大砲塔を動かす意外な力とは

戦艦の砲塔に水圧駆動が適しているワケ

 2019年現在、大きなものを動かすには電気モーターや油圧が用いられることが多いですが、大出力の電気モーターが普及したのは第2次世界大戦後になってからで、大戦前は世界的に水圧もしくは油圧を用いていました。

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1942(昭和17)年8月に撮影された大和型戦艦の2番艦「武蔵」。砲身1本あたり166tあった(画像:アメリカ海軍)。

 「大和」が建造されたのと同時期のアメリカでは、戦艦の砲塔駆動に油圧も使われるようになっていました。しかし、日本ではオイル漏れを防ぐシーリング加工などの工作精度が低かったため、油圧式の導入は軽巡洋艦や駆逐艦クラスの小型砲塔に限られました。

 重巡洋艦以上の大型艦には、技術的に確立され、なおかつ漏れても問題のない水圧式が多用されたのです。

 ただし水圧式といっても、動力の源は蒸気タービンエンジンです。主機関として艦中央に搭載した蒸気タービンで発生した力を水圧ポンプに伝達し、このポンプを動かすことで砲塔各部を動かしていました。

 水圧式の場合、内部には真水が充填されますが、油圧式だと漏れたオイルに引火する恐れがあるのに対して、水であれば引火の問題はありません。また漏れても真水は蒸発していくため、水量さえ気にして減ったらその都度補充すれば済みます。

 さらに、錆などメンテナンス性の観点から普段は真水を使っていましたが、戦闘などでポンプが破壊され、内部の水が少なくなったら、非常措置として海水を用いることができました。これらのメリットから、戦艦「大和」は駆動方式を水圧としたのです。

 2019年現在、海上自衛隊の護衛艦が装備する主砲は、76mm単装砲や127mm単装砲ですが、これらは全て電気油圧式です。これら単装砲のなかで最も重いのは、はたかぜ型護衛艦が装備する54口径5インチ単装速射砲で重さは約67t、約2500tもの重さがある戦艦「大和」の45口径46cm三連装砲塔と比べると40分の1以下の重さです。

 戦艦「大和」は、この砲塔を3つも搭載していたのですから、やはりその大きさはケタ違いだったといえるでしょう。

【了】

【写真】レイテ沖海戦で奮闘する戦艦「大和」の上空写真

Writer: 柘植優介(乗りものライター)

子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。とうぜんミリタリーも大好き。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。

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コメント

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1件のコメント

  1. ちなみに大和は46cm三連装砲3基装備したわりにはコンパクトに作られたらしいぞ。
    参考程度に大和の全長は263m、モンタナは270m