「速さ」にステータス全振り ソ連MiG-25戦闘機の割り切り 函館にも来たスピードキング

最速の座に50年 伝説はいつまで続く?

 MiG-25は上昇高度記録も持っており、ほかの戦闘機では到達することさえできない高度3万5000mまで4分11秒で駆け上がります。そして超音速まで加速し、大型のレーダーと高性能ミサイルを活かして一撃を加えるという目的に特化、世界で最も優秀な防空用「迎撃戦闘機」として、ソ連防空軍をはじめ多くの国にも輸出されました。

 実戦経験も豊富であり、1971(昭和46)年にまず偵察型MiG-25Rがデビュー。高高度をマッハ3.2で飛ぶMiG-25Rをレーダーで発見できても、戦闘機も地対空ミサイルも容易に振り切ってしまうため、MiG-25は世界中に衝撃を与えました。そして戦闘機型も1991(平成3)年の湾岸戦争において、アメリカ海軍のF/A-18を撃墜しました。これはアメリカ軍にとって、ベトナム戦争以降の戦闘機VS戦闘機、唯一の敗北です。

 一方1970年代以降、飛行機に最大速度の向上が求められることはなくなりました。熱の壁の問題に加え、超音速飛行はあまりに燃費が悪すぎたためです。亜音速の巡航能力が重視されるようになり、戦闘機も非常時にマッハ1をわずかに超える程度の能力があれば十分となりました。結果として、あくなき速度競争の最終勝利者となったMiG-25は、現在に至るまで50年もの長きにわたり王座の地位に君臨しています。

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発展型MiG-31B。新開発の電子走査レーダー、長距離空対空ミサイルとネットワーク情報共有システム搭載によって現代的迎撃戦闘機として生まれ変わった(関 賢太郎撮影)。

 MiG-25も亜音速飛行能力が重視されるようになり、最大速度を抑え燃費を改善した発展型MiG-31が開発されました。そして現在ロシアでは、MiG-31の後継を担う次世代迎撃戦闘機開発を計画しており、「MiG-41」とも呼ばれています。MiG-41はマッハ3から4以上の速度が与えられるともされます。

 MiG-25の伝説を受け継ぐ最速戦闘機が実現するか否か。その動向が注目を集めています。

【了】

【写真】土中から発掘されたMiG-25

Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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コメント

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1件のコメント

  1. 平和な今に走るクルマだって性能向上を図ってる。
    自国の生死を争う兵器は、自国の正義に懸けて、モチロンあわよくば買い手が付けば、自国の外貨獲得にもなるんだから必死だよね。
    アメリカやロシアや中国も必死ださぁ