Su-25 なぜ世界中で売れまくり? A-10の穴を埋めるソ連製攻撃機 安い 強い 扱いやすい
ひっぱりだこの背景には対テロなど戦争の変質も
ロシア以上にアゼルバイジャンのSu-25に激怒したのが、実際にSu-25の爆撃を受けることとなったアルメニアです。Su-25にはSu-25で報復を。なんとアルメニアは隣国ジョージア空軍の、新造されたばかりのSu-25をハイジャックして自分のもにしてしまいます。そしてアゼルバイジャンとの戦争へ実戦投入しました。
さらにアルメニアはロシアからもSu-25を購入していますが、両国の間にあったジョージアが空輸の障害になっていました。アルメニアはジョージアを通過するため、合法的に飛行する輸送機と緊密な編隊飛行を実施、「レーダー上輸送機1機に見せ」堂々と領空侵犯、Su-25の空輸を成功させています。
民族戦争は感情的な部分がどうしても強くなりがちであり、かつてのB-29戦略爆撃機にさえ匹敵しうるSu-25の強力な搭載能力が、安価で、しかも傭兵とセットで導入することで簡単に即戦力となってしまうことから、無差別の殺傷に使われてしまうことも少なくないようです。Su-25は世界中の戦争の常連であると同時に、国連において「人道」という言葉とセットで議題に上がる常連ともなっています。
皮肉なことに世界大戦の危機が消えた現代は、「十分な対空能力を持たない」とか「地対空ミサイルに脆弱すぎる」といった点が問題とならない、比較的小規模な勢力が戦う民族や宗教を理由とする戦争、対テロ作戦、麻薬戦争が中心となっています。だからこそ、極めて安価でありながら強力な爆撃能力を持つSu-25が重用され、同時にアメリカもまた、限られた予算で多くの飛行機を保有し続けられるA-10を必要としているのです。
国際法に対する規範意識が高く、ほぼ誘導爆弾を用いる紳士的なA-10に比べて、市街地への絨毯爆撃さえ容赦なく行うSu-25は、アンチヒーロー的ではあります。とはいえこれは「道具」を使う人間側の問題です。Su-25が現代ジェット軍用機最高傑作機のひとつであることに疑いの余地はありません。
【了】
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
コメント