戦果は誤認のおかげ? 時代を先取りしすぎた異色の英製戦闘機「デファイアント」とは

「デファイアント」の戦果は「ハリケーン」に誤認されたおかげ…?

 配備前から懐疑的な面が多かったものの、1939(昭和14)年12月から軍で運用を開始した「デファイアント」は、1940年5月末に始まったダンケルク撤退戦などで、ドイツ軍の爆撃機ハインケル He111や急降下爆撃機のJu87「スツーカ」といった撃墜実績をあげました。

 しかし、肝心のメッサーシュミットBf109など戦闘機相手では、一方的に撃墜されることが多く、配備直後から早くも2線級の機体という位置づけになってしまいます。

 それでも、第2次世界大戦におけるイギリス最大のピンチとなったバトル・オブ・ブリテンでは、戦える戦闘機は全て参加するという切羽詰まった状態だったため、本来の役目である昼間戦闘機として駆り出されます。この戦いにおいてかなりの損害を被り、本土での空戦がひと段落するころには、「デファイアント」は完全に昼間戦闘機としての役目から外されます。

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「デファイアント」は、昼間戦闘機としては早々に一線を引くも、夜間戦闘型や電子戦機型、標的えい航機型など派生型が多く作られた(画像:帝国戦争博物館/IWM)。

 その後「デファイアント」は、夜間戦闘機としての運用も模索されましたが、本格的な夜間戦闘機が登場すると、その役割も終えることになります。なお、ダンケルクからの撤退戦やバトル・オブ・ブリテンでは、戦闘機相手でもそれなりに戦果を挙げたとされていますが、その多くが、「デファイアント」を「ハリケーン」と誤認したドイツ軍機が後ろに回って逆襲されたものといわれています。そのようなミスを招いたのは、「デファイアント」が「ハリケーン」と同じエンジンを使っていたのが一因とも。

 ちなみにイギリス海軍も、ブラックバーン「ロック」という同じようなコンセプトの戦闘機を生産・配備しました。こちらは艦載機として、機銃掃射と急降下爆撃を実施した記録が残されていますが、結局、画期的な空戦論を体現したはずの「旋回機銃単発戦闘機」という機種は、後に後継機が続くことはありませんでした。

 しかし、ジェット戦闘機では一時期、パイロットひとりだけでは対応しきれないということで、レーダーや火器管制の担当者が同乗する複座戦闘機が多かった時代もありました。実はイギリス空軍の発想は、時期がものすごく早かっただけで、それほど間違いではなかったのかもしれません。

【了】

【写真】遠目には似てる…のか? 普通の単発単座戦闘機「ハリケーン」

Writer: 斎藤雅道(ライター/編集者)

ミリタリー、芸能、グルメ、自動車、歴史、映画、テレビ、健康ネタなどなど、女性向けコスメ以外は基本やるなんでも屋ライター。一応、得意分野はホビー、アニメ、ゲームなどのサブカルネタ。

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