戦艦「山城」の役得 日本海軍悲願の国産超ド級戦艦 扶桑型の2番艦が担った役割とは?

紆余曲折を具現化したような艦橋で知られる戦艦「扶桑」は、初の国産超ド級戦艦ということで多くの試行錯誤を担いましたが、同型の2番艦「山城」もまたその一端を担っています。とはいえ、2番艦ゆえの「役得」も。

「山城」が担った航空関係実験 実は扶桑型の航空戦艦化計画も?

「山城」は航空関係のトライも担っています。

 第1次改装で二番砲塔上に飛行甲板を設置し、最初の空母「鳳翔」が竣工する9か月前の1922(大正11)年3月29日、航空機を発艦させることに成功し、戦艦や巡洋艦における航空機運用の先駆けとなりました。もっとも、当時は艦載機という明確な概念もなく、狭い飛行甲板で陸上機を扱うのは難しく、ほどなく「山城」の飛行甲板は撤去されています。

 また1941(昭和16)年春に、九四式水上偵察機を改造した無線操縦飛行機の実験も行っています。1回目は「山城」の操艦ミスで合成風力(飛行機が自ら進んで受ける風の力と、艦が航走することで起きる風の力)が不足し発艦に失敗してしまいますが、2回目は成功します。

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無線操縦飛行の実験機となった九四式水上偵察機(写真は同型機)。安定性に優れていたため実験機に選ばれた。機体は赤色に塗装されていたという。

 この技術は、21世紀に入って戦争のやり方を一変させた、無人航空機の先駆けと言えるかもしれません。ちなみにこの無線操縦技術は完成の域に達したと認定されますが、コストが高すぎるという理由で実用化は見送られています。

 太平洋戦争が始まると、「山城」はミッドウェー海戦に主力部隊として出撃するも戦闘の機会は訪れず、その後も「決戦戦力」としては力不足と見なされて、後方任務や練習艦扱いでした。

 ミッドウェー海戦敗北後、空母戦力再編のため、日本海軍では既存の戦艦や巡洋艦を空母へ改造する検討が行われ、伊勢型と扶桑型が航空戦艦への改造候補に残りました。しかし扶桑型は伊勢型よりも改造工事が複雑で工数を要するため、改造中止が決定されます。「山城」は航空関係試験にも関わってきたのですが、実戦では艦載機を運用する機会に恵まれることはありませんでした。

 日本の敗色が濃くなり戦力が払底してくると、後方に引いていた「扶桑」と「山城」も前線に引っ張り出されます。1944(昭和19)年にレイテ沖海戦へ参加するも、アメリカ駆逐艦隊から魚雷を受けて、「扶桑」と同じ10月25日にスリガオ海峡で撃沈されます。生存者は10名と言われています。

「欠陥艦」などともいわれますが、国産初の超ド級戦艦として、日本海軍の経験値を稼いだ功績は評価されてよいと思います。

【了】

【写真】砲塔上に飛行甲板を設けた「山城」の航空機発艦実験

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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