ボーイング747は音速を超えたのか 対地速度1327km/h NY~ロンドン最短記録のカラクリ
航空機の速度記録はどう計測する? SR-71「ブラックバード」の場合
見方を変えれば、空気の塊は静止していたのに、「地球表面が空気の塊に対し、BA112便の針路とは反対向きに400km/hもの相対速度で動いていた(この場合、地球の自転とは無関係)」ためにBA112便は1327km/hもの対地速度を記録した、と言い換えることができます。
なおジェット飛行機における最大速度記録は、1976(昭和51)年7月28日、SR-71「ブラックバード」偵察機がマークした3529.56km/hです。これは国際航空連盟(FAI)が定めた「ストレート15/25kmコース」、すなわち「空中に15kmから25kmの任意の距離で直線コースを設定し、コースの両端から1度ずつ2回飛行しその所要時間から平均速度を算出、2回目の飛行は1回目を終えて無着陸かつ1時間以内に行う」という規定において計測されたものです。
同じコースを2度、方向を変えて飛ぶことで、ストレート15/25kmコースでは風速の影響をゼロとみなすことができます。SR-71の巡航高度はボーイング747の2倍近いため一概にいうことはできませんが、もしBA112便と同じ状況下で飛行した場合は3900km/h以上に到達できたはずです。
【了】
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
太平洋戦争でも、偏西風で米軍の爆撃機は大変困ったそうな。