緑のレスキュー車を知っているか 青の車体も存在 色だけじゃない課せられた役割と歴史

地震や火山噴火、台風災害に加えて最近では豪雨や豪雪災害、竜巻などへの備えが必要になりつつあります。その備えの一環として警察もレスキュー車を運用しており、それらは消防と区別するために赤以外の色で塗られています。

最近の警察車両はカラフル

 レスキュー車、正式名称「救助工作車」は、全国の自治体消防に配備され、交通事故や火災、自然災害などで人命救助を行うために用いられる緊急車両です。消防が用いる赤いボディの車体は比較的よく知られていますが、これによく似た役割の、警察が用いる青や緑のものがあります。

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警視庁の機動救助隊に配備されている緑色のレスキュー車。同隊は発足からすでに半世紀近い歴史を有する(柘植優介撮影)。

 とはいえ市井の交通事故などで目撃するのは消防の赤いレスキュー車で、警察の青いレスキュー車が出動しているところは、あまり目撃されることはありません。それは警察のレスキュー車が、大規模災害などを想定して配備されているから、という理由があります。

 そもそも警察にレスキュー車が入るきっかけになったのは、1995(平成7)年1月17日に起きた阪神淡路大震災でした。それまで、災害発生時の警察のおもな任務は警備活動で、本格的な人命救助装備は警視庁や大阪府警などの大規模な警察しか保有していませんでした。

 しかし阪神淡路大震災を契機として、それ以外の警察にも広域緊急援助隊が編成されるようになり、その基幹装備としてレスキュー車も配備されるようになります。このとき消防の車体と識別できるように、青いレスキュー車が誕生しました。

 緑色のレスキュー車は阪神淡路大震災以前、警視庁が独自に編成していた「機動救助隊」の、各種救助車両の色です。

 警視庁の機動救助隊は、1972(昭和47)年に制定された独自規定に基づいて、機動隊のなかに編成されたもので、緑色の車体色はこのときから運用している伝統の色です。そのため実は、青いレスキュー車よりも長い歴史を持っています。

災害対策も警察の重要な任務

 警視庁の機動救助隊は、警察の緊急通報番号である「110番」から、「レスキュー110」と通称され、大規模災害だけでなく、平素から水難救助や山岳救助にも従事しています。そのため、警視庁独自の水難救助車や山岳救助車なども保有しており、これらも緑色主体の塗装が施されています。

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1995年の阪神淡路大震災後に全国で配備されるようになった青色のレスキュー車(柘植優介撮影)。

 また車体中ほどに入った白帯には、疾走する黒豹が描かれています。これは救助活動時に要求される「素早さ」「しなやかさ」を象徴しているそうです。

 2012(平成24)年9月1日には、東日本大震災の教訓を踏まえ、首都直下型地震といった大規模災害などへの対応能力をより一層高めたプロフェッショナル部隊として、警視庁に「特殊救助隊」、通称「SRT」も発足しています。この部隊は警察組織初のレスキュー専門部隊で、使用する車両は緑色のレスキュー車であるものの、シンボルの黒豹は走る姿ではなく顔面を大きく描き、機動救助隊との違いを打ち出しています。

 なお、管轄エリア内に山地がある東京都多摩地区の青梅署や高尾署、五日市署などには、4輪駆動車を用いた緑色の山岳救助車などが配備されていますが、本庁機動隊の機動救助隊ではなく所轄署の装備であるため、黒豹は描かれていません。黒豹のシルエットはあくまで警視庁の、機動救助隊および特殊救助隊(SRT)のシンボルマークということのようです。

 ちなみに警察レスキュー部隊の特徴としては、隊員も警察官のため、消防のレスキュー隊と異なり雑踏整理や交通規制を自分たちで行える点があげられます。

【了】

【写真】さすが多用途すぎる「ウニモグ」警察の高性能レスキュー車にも

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