【空から撮った鉄道】新顔の新幹線、空から見ると愛らしい「カバさん」? 東京の“桜と鉄道名所”を縦横無尽に撮り回る

2024年4月の東京は近年にしては珍しく桜の開花が遅く、第2週になっても満開。10日は春霞もないスカッとした快晴だったので、1時間ばかり都内を空撮しました。時間帯はあまり空撮したことのない15時以降。どのような作品に仕上がるでしょうか。

この記事の目次

・平年より遅かった東京の桜
・桜の名所と鉄道が近い場所を選んで
・初めて山形新幹線E8系を俯瞰
・東京中で、一斉にソメイヨシノの寿命が来ている
・着陸まで視程良好

【画像枚数】全20点

平年より遅かった東京の桜

“春に三日の晴れなし”とはよく言ったもので、春は低気圧と高気圧が交差し、晴れたと思ったら雨が降り、せっかく満開となった桜も、花散らしの雨となることもしばしば。近年の桜は3月に咲いていましたが、2024年は入学式シーズンへずれ込むほど遅く、東京は満開になるや曇天、雨、晴れと、天気がころころ変わりました。

 私は東京をベースに空撮しているため、手軽に桜が撮れるのも東京です。コロナ禍を過ぎ、そろそろ桜のシーズンを撮っていこうといくつかの地域を候補にしていましたが、どうも今年の桜は開花が遅いうえに、候補地の天気がパッとしない。微妙な天候でチャーター料をかけて撮るほど、早急に空撮しないとならない案件もない。「ふむ、今年はパスするかな……」と思いあぐねていると、10日にスカッとした晴れが訪れました。

Large sakura 01

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15時半ごろ、札幌貨物ターミナル駅発 隅田川貨物駅行きの3054レ貨物列車が通過する。日中の飛鳥山では貨物列車と出会うことがなかったので、私にとっては新鮮な1カットである(2024年4月10日、吉永陽一撮影)。

 4月10日の東京は、前日の花散らしの雨が嘘のように、早朝から雲ひとつない快晴に恵まれていました。室内撮影業務へ行く途中、雨で散らなかった桜が残っており、背景は富士山がくっきりという、日本を象徴するようなありがたい光景に出くわしました。業務で急いでいたために撮影はできませんでしたが、春霞もなく富士山もくっきり見えるのは久しぶりです。

 昼も安定した快晴で、さすがに富士山はぼやけてきましたが、視程が良く空撮できるのではと思っていると、午後遅めならば飛行機が空いているとのこと。桜と快晴は今日しかないため、朝から同業の空撮カメラマンたちが飛びまくっていたようです。午後遅い時間の都心は、15時を過ぎると羽田空港経路が設定されて管制圏内となり、自由に飛べません。事前に高空での飛行申請を済ませ、南風となって着陸機が来ても差し障りない高度から狙うことにしました。

 14時半過ぎに離陸。いつも搭乗するセスナ172型は過給機のないエンジンのため、高い高度へ達するのに数十分を要します。高度8000フィート(約2438m)でパイロットが管制と交信し、すんなりと都心部への進入が許可されました。風向きが変わって、着陸機が都心部を通過しないルートになったようです。肉眼で羽田空港を見ると、着陸機は東京湾を横断するルートでした。

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Writer: 吉永陽一(写真作家)

1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。

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