新型コロナ禍中に積極活動 強襲揚陸艦「アメリカ」 日本も他人事ではないその理由は?

最新鋭ステルス戦闘機F-35Bを運用可能 海上自衛隊も他人事ではないワケ

 現在、日本を含む極東に展開するアメリカ海軍艦艇のなかで、この「アメリカ」が唯一、有している能力があります。それがアメリカ海兵隊の最新鋭ステルス戦闘機F-35Bの運用能力です。

 F-35Bは垂直着陸/短距離離陸(STOVL)能力を有している機体で、空母のように機体を射出するためのカタパルトや、着艦時に機体をひっかけるアレスティングワイヤーなどを装備していない「アメリカ」でも運用することができます。通常、「アメリカ」は6機程度のF-35Bを搭載しますが、必要とあればヘリコプターなどの搭載数を減らし、最大で20機程度のF-35Bを搭載できます。

 しかし裏を返せば、今回の新型コロナウイルスで大きな被害を受けた空母「セオドア・ルーズベルト」のように、もし「アメリカ」がなんらかの形で活動することができなくなってしまった場合、このF-35Bを運用できる艦艇は、極東には1隻も存在しなくなってしまいます。

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2019年6月19日、南シナ海を航行する海自護衛艦「いずも」(写真手前)と米海軍空母「ロナルド・レーガン」(画像:アメリカ海軍)。

 そこで注目されるのが、海上自衛隊のいずも型護衛艦です。いずも型は今後、段階的な改修を経て、F-35Bの運用能力を持つことになっていますが、そこで搭載されるのは航空自衛隊のF-35Bで、そうすれば太平洋側の警戒監視や島しょ防衛にも役に立つという見方ばかりが注目されがちです。

 しかし、もう少し視野を広げると、たとえば「アメリカ」が活動できない状況下でいずも型がアメリカ海兵隊のF-35Bを受け入れ、さまざまな海域を航行すれば、日米双方の練度向上につながるだけではなく、日米同盟にとってこれ以上ないアピールにもつながります。

「空母化」という言葉だけが独り歩きしがちないずも型護衛艦の改修ですが、今回の騒動でその意義に関する別の見方が垣間見えてきます。

【了】

【写真】けっこう狭そう? 「アメリカ」フライトデッキのF-35B

Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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コメント

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1件のコメント

  1. でも”いずも”型では多くて10~12機程度。
    そうなるとアルファーストライクで使えるのが4機そこそこ。
    それで何ができる?という話。
    それに早期警戒機が無ければそうそう艦から離れるわけにはいかない。
    対潜機もいるしとなるとF-35Bの機数を削らないと乗せるスペースが足りない。
    そうなると打撃力が落ちて有難味は落ちるが、High Value Unitであることは変わりがないから、それを守る艦艇、航空機が少ないと使い道が無くなるわな。