戦艦「大和」は潜水艦も探知できた? 旧海軍最新の潜水艦探知装置 利便性や性能は?

「大和」が装備した水中聴音機の性能は

 戦艦「大和」が装備していたのは「零式水中聴音機」と呼ばれるもので、同艦が就役した1941(昭和16)年時点では最新の水中聴音機でした。

「大和」は零式水中聴音機を艦首水面下の最下層部分に、左右1基ずつ計2基備えていました。2基は別々に用いることも統合して使うことも、どちらでも可能です。ちなみに聴音機区画は音圧を高めるために真水で満たされていました。

Large 200608 yamato 02

拡大画像

1943年にトラック泊地で撮影された、「大和」(左奥)と姉妹艦の「武蔵」(右手前)(画像:アメリカ海軍)。

 そこから2層上の左舷側、喫水線付近に、調音員が装置を操る聴音機室が設けられていました。とはいえ、ここで操作にあたる聴音員はわずか2名であり、他方で「大和」の対空警戒や対水上監視が十数人規模で行われていたのと比べると、はるかに少人数だったといえます。なお艦橋にも受聴器はあり、音を聞くだけならできました。

 1944(昭和19)年10月のレイテ沖海戦後にはさらに1基増設され、「大和」が最期を迎えた1945(昭和20)年春時点では、聴音機は3基、装備されていました。

 この「大和」が装備した零式水中聴音機はどれほどの性能だったかというと、就役前の公試時に、試射された主砲砲弾が水面に着弾した際の音を、航行中にもかかわらず捉えたほか、時期は不明なものの、鹿児島湾に停泊した際には、湾外を航行する味方の潜水艦音を約30kmの距離で検知しています。

 このほかにも、向かってくる敵魚雷の航走音をいち早くキャッチし、味方艦隊に警報を発することに成功したといわれていますが、一方でアメリカ軍潜水艦が放った魚雷があたったこともあり、万全ではなかったようです。

 戦艦「大和」というと、主砲や装甲、多数の対空火器などが注目されがちですが、水面下に隠れてしまう艦底にも最新鋭の装備があったのです。それだけ潜水艦の脅威が、就役当初から無視できない存在になっていたという証左なのかもしれません。

【了】

【写真】レイテ沖海戦で奮闘する戦艦「大和」

Writer: 柘植優介(乗りものライター)

子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。とうぜんミリタリーも大好き。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。

2件のコメント

  1. 戦艦大和も、最後は乗組員も含め、沖縄沖で軍部の捨て駒に利用された。
    遺族の事を思うと、残念です。

  2. 確かアメリカの空母”アメリカ”はソナーを搭載してたはず。
    ただ言うほど役に立たなかったからすぐに撤去していたはず。