陸自V-22「オスプレイ」木更津への暫定配備開始…なぜ木更津? この後はどうなるの?

木更津での5年間「オスプレイ」は何をするの?

 V-22「オスプレイ」は、陸上自衛隊として今回初めて導入される機体です。そのため、これまで限られた一部のパイロットや整備員たちが渡米し、V-22「オスプレイ」の運用に必要な知識と技術を修得してきました。

 しかし、この時に派遣された隊員は必要最低限の数となるため、最初に実施されるのは、渡米せずに新編部隊の立ち上げや、V-22「オスプレイ」の受け入れ準備をしてきた隊員たちに対して、木更津駐屯地で実機を用いた教育を施すことになります。

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誘導路をタキシングするためエンジンナセルを前傾させる「オスプレイ」。この後、格納庫前の駐機スポットへと向かっていった(2020年7月10日、武若雅哉撮影)。

 ここで想定される教育は、おもに「飛行」「整備」「補給」などです。

「飛行」は、パイロットや機上整備員たちに対して行われ、駐屯地内での試験飛行から、洋上、山間部などでの試験飛行などが含まれます。

「整備」は、V-22「オスプレイ」の機体に関する基礎的な整備教育や、日々のフライト前後に行われる整備、飛行時間に応じて行われる整備、そして部品の故障にともなう整備などが含まれます。

「補給」は、ネジ1本にいたるまで厳密に管理されている機体の部品やオイルなどの発注や調達など、機体の維持管理に必要な分野が含まれます。

 木更津でのV-22「オスプレイ」の5年間にはこうした、隊員が様々なことを学び、機体を実践配備するための準備期間が含まれています。このあいだに隊員たちの練度が向上し、実任務に対応できると判断されれば、木更津駐屯地を起点として全国へと飛び立つことになるでしょう。

 V-22「オスプレイ」のおもな役割は、島しょ防衛において「水陸機動団」を南西方面へと輸送することです。ほかにも大量の物資を搭載し、既存のヘリコプターよりも素早く遠方まで移動することができるため、災害発生時に人員及び救援物資の輸送で運用することも想定されています。

【了】

【写真】飛行中の日の丸「オスプレイ」 木更津着陸寸前

Writer: 武若雅哉(軍事フォトライター)

2003年陸上自衛隊入隊。約10年間勤務した後にフリーフォトライターとなる。現場取材に力を入れており、自衛官たちの様々な表情を記録し続けている。「SATマガジン」(SATマガジン編集部)や「JWings」(イカロス出版)、「パンツァー」(アルゴノート)などに寄稿。

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コメント

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1件のコメント

  1. オスプレイ配備関連記事で大半が書かれていないのが、なぜ複数の地権者の方が反対しているのか?なぜよりによってピンポイントでわざわざ佐賀空港が選ばれたのか疑惑が残るということです。

    ネット上では「金目当て補償目当てだろ」という心無い意見が多数ありますが、実際は全く逆です。

    佐賀空港があった場所というのは、元々は資源豊富な漁場です。
    それを「食糧難解消」という理由から国策で広大な面積の貴重な干潟を干拓工事し、農地にします(翻弄1回目)。
    よく佐賀空港周辺は何もないと言われますが当たり前です。それだけの範囲の海を埋めたのですから。
    ちなみにこの時の漁業補償金は“0円”です。
    代わりに干拓地の一部を与えるので農業をやってくれと引き渡されます。

    ところが今度は国が一転して減反政策を打ち出します。
    そして干拓地に空港と農業研究施設を造ると言い始めます(翻弄2回目)。

    地権者らは猛反発し流血騒ぎも起こるほどでしたが、3度目の計画にして「公害防止条例の1つとして自衛隊を含む軍隊の利用は認めない」と文書化したうえで民間利用に限った空港建設を認めます。

    そして今回のオスプレイ配備計画です(翻弄3回目)。

    計画が表沙汰になった時期は沖縄知事選挙直前の時期と重なります。
    多くの利権が絡む福岡空港拡張計画とも被ります。
    (九州国際空港建設地が佐賀空港一帯と荒尾沖の2案に絞られそうになった際、福岡県関係者が集計方法の重みを変更して某外郭団体に候補地選びを一任した結果、建設計画そのものが流れた経緯があります)

    今回の計画にあたり佐賀空港に自衛隊と共用しないという約束があったことを知っていたか否かという質問に対し、国や省庁関係者の答えは「知っていた」「知らなかった」とブレブレでどちらにせよ嘘をついていることになります。
    計画前に現地に出向いていないことも後に判明しています。

    過去の政務官は「環境アセスにひっかからない面積を先ず買う。その後買い増せば調査の必要はない」と経済界向けの会合で話しており、地権者もまだ聞かされていない買収金額も先に漏らしています。

    ちなみに計画が持ち上がった初期の地権者向け説明会では、現在支払い契約中の高価な大型農機具の件について「配備計画が決まってからでないと補償するかどうかもその金額も約束できない」と。

    また、近年の佐賀空港は利用者が伸び続ける一方、設備が小規模な為、福岡空港とは別の意味で“混雑空港”です。
    意外に思われるかもしれませんが、施設不足ゆえに離発着待ちのスタンバイがしばしば発生していますし、増便を諦めたという話もあります。

    それに佐賀空港周辺は国際レベルで知られる熱気球飛行エリアと被っており、双方に配慮した特別な航空管制が行われています。

    長々と書きましたが、佐賀にオスプレイ配備するにしても、上記のようにわざわざピンポイントで佐賀空港を指定するのは揉め事が増えるだけで普通ならば最初の議論の段階で候補から消えてもおかしくない場所なのです。

    にもかかわらずオスプレイに加えて目達原駐屯地のヘリ50機も持ってくるという。それでいて目達原駐屯地は機能縮小しつつ残すという。

    目達原駐屯地周辺住人の方々が納得されるならば既にある目達原駐屯地を活用したり拡張する案もあるでしょう。
    もっと有明海や熱気球飛行に影響が及ばない佐賀平野内でも別の場所に造る案もあるでしょう。
    九州内離島の飛行場を整備し配備する案もあるでしょう。

    数年前の九州豪雨や熊本震災直後、政府は佐賀空港を防災拠点にしたいと言いました。
    あれからずいぶん経ちますが、会議録等を漁ってもその後まともに議論した形跡は発見できませんでした。

    本当に国民の為熟考して決めた計画なのか私にはそう思えませんでしたし、ましてや佐賀や地権者の方々が心無い中傷を受けているのを見ると不憫でなりません。