【空から撮った鉄道】最後のブルートレイン「北斗星」 ラストランを上空から出迎える
2015年8月23日、寝台特急「北斗星」の最終列車が上野駅へ到着しました。「ブルートレイン」最後の列車となった「北斗星」。尾久から上野までのラストランを、ヘリから記録しました。
経費はかかるが、衝突事故防止のためセスナ機ではなくヘリで撮影
寝台特急「北斗星」がラストランを迎えたのは2015(平成27)年8月23日のこと。この日をもって、急行「はまなす」と「特別なトワイライトエクスプレス」を除いて、寝台特急「ブルートレイン」は終焉しました。
思い起こせば、幼少期のころから「ブルートレイン」は憧れの存在で、旅でも仕事でも、乗車する時はいつも高揚感を味わっていました。あの青色の車体に乗り込むとき、日常とは異なる特別な雰囲気に包まれます。また「北斗星」は、初めて北海道へ旅したときの思い出ある列車で、道内での仕事や旅ではかなりお世話になり、さらに食堂車も連結されていたので、グラス片手に一服するには最高でした。
「北斗星」の最後の空撮は、札幌発のラストラン2日前(2020年3月7日配信【空から撮った鉄道】あれから4年半が経過 ラストラン2日前の札幌発上野行きブルートレインを参照)と、8月23日に上野方でのラストランを出迎えるのと、計2回行いました。単なる「北斗星」の廃止だけでなく、「ブルートレイン」という国鉄時代から続いてきたものが終焉するという転換点を撮りたかったのです。それに、「北斗星のラストランを空から見てみたい」という声もあり、空撮の計画を進めました。
ラストランは報道ヘリの存在も考えられました。さよなら列車やデビュー列車は、たいてい何社かの報道ヘリは飛行しています。ある程度のヘリが飛んでいると想定すると、セスナ機では厄介です。セスナ機は左旋回で空撮しますが、ヘリは右旋回。しかもヘリはホバリングしますが、セスナ機は止まることができないので、常にグルグル飛びまわります。こういう時は衝突事故防止のため、ヘリの動きに合わせることが多く、上野まで走っている「北斗星」のシャッターチャンスを逃してしまうかもしれません。そこでこちらもヘリにしました。ヘリは経費がかかるのですが、それは安全を担保するうえでの必要な経費。いっぱい売りこんで回収するしかありません (笑)
「北斗星」の上野駅到着は9時26分です。このとき報道ヘリがいたかどうかはっきり思い出せませんが、上空でAS350ヘリを一機視認したので、どこかの社がいたと思います。東京ヘリポートから離陸して上中里駅の近くまで北上すると、さっそくEF510に牽引された青い編成がやってきました。機関車から客車まで、すべて青色に統一された「北斗星」は、有終の美を飾るにふさわしい美しい編成です。
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Writer: 吉永陽一(写真作家)
1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。