旧海軍空母「信濃」 護衛艦隊 米潜水艦…三者三様の立場から見る「運命の22時間」

当時、最大最強の空母となるはずだった旧日本海軍の「信濃」は、初出航わずか22時間で撃沈されました。その運命の航跡を「信濃」、護衛の駆逐艦隊、そして「信濃」を撃沈したアメリカ潜水艦の、三者三様の立場から振り返ります。

歴戦の護衛隊と意見が対立した航海

 空母「信濃」は1944(昭和19)年11月19日付で竣工し、海軍に引き渡されました。しかし「竣工」というには程遠い現況で、横須賀海軍工廠から引渡証書を受け取る艦長 阿部俊雄大佐の手は、怒りのあまり震えていたといわれます。

「信濃」護衛に着いたのは歴戦の第17駆逐隊です。この時の司令艦は日本で最初にレーダーを装備した駆逐艦「浜風」、ほか、幸運艦として名を残すことになる「雪風」、ハワイ作戦やミッドウェー海戦にも参加している「磯風」の3隻で第17駆逐隊は編成されていました。

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第17駆逐隊の駆逐艦「雪風」(画像:アメリカ海軍)。

 とにかく忙しすぎる隊で、レイテ沖海戦から11月25日に戦艦「長門」を横須賀へ送ったばかりでしたが、28日には呉に向かう「信濃」を護衛することになったのです。補給や修理、休養も不十分の過労状態でした。

 航海前の作戦会議で第17駆逐隊の3人の艦長は、潜水艦を回避すべく昼間の沿岸航行を強く主張します。しかし「信濃」艦長 阿部大佐は空爆回避の夜間外洋航行を選択します。昼間は敵航空戦力の攻撃が予想される一方、こちらは空母なのに艦載機無し、軍令部からは沿岸基地航空隊からの支援も見込めないことが知らされており、上空直援が受けられない阿部艦長としては、夜間外洋航行の一択でした。もう嫌な予感しかありません。

 第17駆逐隊への指示事項は「護衛艦は敵潜水艦を深追いして直衛に隙間をあけない」でした。「護衛艦が持ち場を離れた場合、即座に呼び返す。『信濃』の赤いマスト灯を10秒間点滅するのがその合図だ。このような信号を送る必要のないように心すること」と阿部艦長は作戦会議で述べています。昼間沿岸航行の意見具申も拒否され、潜水艦ハンターとしても自由に動けない疲労した第17駆逐隊が、多いに不満だったことは想像に難くありません。

【画像】空母「信濃」の(予定)航路と「アーチャーフィッシュ」の行動

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