「♪高原列車は行く」の舞台は 朝ドラ『エール』古関裕而 ある意味「鉄道ソング王」

NHKの朝ドラ「エール」の最終回でも歌われた歌謡曲「高原列車は行く」。そのモチーフとなった鉄道は、ドラマにおける主人公のモデルとなった作曲家・古関裕而の故郷福島県にありました。実は古関、鉄道や運輸事業者と今も深いつながりがあります。

♪高原列車はラララララ、(硫黄鉱山へ)行くよ~

 作曲家・古関裕而の生涯をモチーフとしたNHK朝の連続テレビ小説「エール」が、2020年11月27日(金)に最終回を迎えました。この日は異例のコンサート形式で、古山裕一役の窪田正孝さんによる司会のもと、ドラマに登場した数々の楽曲が披露されるという展開で、ファンならずとも楽しめるものでした。

 そのなかで、関内光子役の薬師丸ひろ子さんが披露した「高原列車は行く」(作詞:丘灯至夫、作曲:古関裕而)は、「古関メロディー」の代表的な歌謡曲として、いまも歌い継がれています。1954(昭和29)年に発売され、歌手・岡本敦郎の伸びのある歌声とともに大ヒットを記録したこの曲ですが、その歌詞は、作詞家の丘灯至夫が福島県で運行されていた「沼尻鉄道」(沼尻軽便鉄道、日本硫黄沼尻鉄道)を思い浮かべて書かれたものです。

 この鉄道はもともと、沼尻鉱山から産出される硫黄を運ぶために開設されました。線路幅762mmの軽便鉄道であるにもかかわらず、40パーミルという現在のJR最大勾配区間に匹敵する急坂があり、「マッチ箱」と呼ばれた小さな車両が15.6kmの距離を走るのに50分弱を要するなど、実際には「ラララララ♪」と歌いたくなるような快適さではなかったようです。1968(昭和44)年に運行を休止し、復活することなく翌年廃止されました。

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沼尻鉄道、往時の姿。一部の車両は猪苗代町内で保存されている(画像:pixta)。

 旧沼尻鉄道の沿線は福島市や郡山市から比較的近く、温泉やスキー場などもあることから、「裏磐梯」地域の観光の足として、人々の旅の記憶に残っています。現地にはかつての車両が保存・展示され、廃線跡は風が心地よいトレッキングコースとしても人気を博しています。

 なお「高原列車は行く」がヒットした当時は、多くの人が八ヶ岳高原を走る国鉄小海線を思い浮かべたようですが、作詞した丘が「少年時代に家族で温泉に向かう際に乗車した沼尻鉄道がモデルである」と語っています。もっとも歌詞を受け取った古関裕而はそんなことは露ほども知らず「アルプスの高原鉄道を思い浮かべて曲を書いた」そうで、もし伝わっていればここまで軽快な曲にはならなかったのかもしれません。

【画像】♪はしる しゃりーんは われらのこころ♪ 古関作曲の大手私鉄社歌

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コメント

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4件のコメント

  1. 乗りものニュースさんが、朝ドラを記事にするのは、珍しい、、

  2. 面白い記事でした。
    一点だけ、福島駅から500mほど西側には生家跡
    とありますが、正しくは東側です。

    • ご指摘ありがとうございます。修正いたしました。

  3. 私も、ずっとこの歌の舞台は小海線だと思っていたのですが、沼尻鉄道だと知った時は、少々拍子抜けしました。でも、確かに3番の歌詞に「五色の湖」と、五色沼が登場していますね。記事にもあるように、メロディーの印象は小海線の方がぴったりの感じですけど。