来るか「軽戦車の時代」 戦車はどこでも走れるけれど どこでも走れるわけではない!

様変わりした地上戦とこれからの主要火力の「あり方」

 中国の15式軽戦車は、最新の射撃管制システムとネットワーク能力を持ち、ほかの戦車や装甲車はもちろん、自走砲から自走対戦車ミサイルなどのユニットとも高速回線でネットワーク化し、大隊レベルで目標発見から火力発揮までを統合して実施できるシステムを備えるといいます。さらに、ほかのユニットから諸元を受けての間接射撃まで可能になっているそうです。アーキテクチャもユニット化され、自己診断機能も持つデジタル戦車で、第4世代のひとつの形ではないかといわれています。

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海上自衛隊のエアクッション型揚陸艇(LCAC)から上陸する16式MCV(2018年7月7日、月刊PANZER編集部撮影)。

 日本の16式MCVは、戦車ではないという意見があることを承知しつつ、敵の直射火器射程内で戦闘する車輌ということで挙げておきます。有事の際、エンジンをかけてすぐ駐屯地を出発し、高速道路網を走って現場に駆け付けられる即応性は、従来の戦車にはないメリットで、もちろん高速道路と国道の橋梁はすべて通行可能です。そして10式戦車と同等レベルの射撃統制装置とネットワークシステムを搭載しています。

 これらに共通しているのは、主砲の大きさや装甲の厚さよりも軽量化と機動性を重視し、ハードウェアよりデジタル化、ネットワーク化したソフトウェアを充実させていることです。

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15式軽戦車内の車長用コンソール。内外の情報を一括して表示することができる。

 現代の陸戦では、ネットワーク化された小隊はネットワーク化されていない中隊を瞬殺してしまいます。数の過多、大砲の大きさや装甲の厚さなどはもはや決定的なファクターにはならないのです。現代戦はネットワーク中心の戦闘であり、戦車や装甲車などはその一端末でしかありません。戦闘車個別のハードウェア性能を最大化するのではなく、戦場ネットワーク全体の戦闘力発揮を最大化するというのが主眼です。

 しかし、正反対の事をいうようですが、シリア内戦や最近のナゴルノ・カラバフ紛争では、第3世代戦車やそれより古い第2世代戦車も使われています。実戦場では重厚な戦車の有用性もまだ完全に失われたわけではありません。ドローンや対戦車火器で撃破される映像が多くアップされましたが、戦場から戦車が駆逐されたという話は聞きません。地上戦を決定づける骨幹戦力であることは変わらないようです。

 結局、軽い方がよいのか、重い方がよいのか。設計家、用兵家の悩みは尽きません。

【了】

【写真】立往生! ちょいと無茶したM1「エイブラムス」戦車

Writer: 月刊PANZER編集部

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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