空港の除雪 実は「雪かきだけで終わり」じゃない! 真冬の旅客機が安全に飛ぶまでの裏側
安全に不可欠な「大雪運航」の総仕上げ
先述のとおり巡航中のシップは、雪の影響を受けづらい高度を飛びます。ただ、地上に駐機しているときには、機体に雪が積もってしまいます。このままでは、シップは離陸できません。
旅客機の場合、おおむね時速300kmくらいで離陸するのが一般的です。この速度帯であれば、雪なんて吹き飛んでしまうと思われるかもしれませんが、雪が主翼に積もって凍ってしまうと、主翼が発生する空気の力を妨げることとなり、大惨事にもなりかねません。実際、1982(昭和57)年にワシントン・ナショナル空港を離陸したエア・フロリダ機が、離陸直後に上昇できずそのまま橋に突っ込むという事故が発生していますが、これは積雪への対応が不足していたことが一因と言われています。
こういった事態を防ぐためには、離陸前にシップの主翼に着氷した雪を除去する必要があり、これは、除氷作業(デ・アイシング)と呼ばれます。真冬の空港で、主翼に液体を吹きかけている作業がこれにあたります。この車両は、デ・アイサーとか、スノーバーと呼ばれる特殊車両で、クレーン車の突端に取り付けた噴霧器のような装置から、液体を吹きかけて雪片を吹き飛ばし、凍りにくくする不凍液も散布します。その際に、水と不凍液の混合比が、温度によって厳格に規定されているそうです。この除氷作業は、シップに対するものであることから、航空会社側が担当します。
このデ・アイシングの作業は、冬の空港の“風物詩”ともいえます。雪の時期だけの話ではないのですが、安全運航は、直接旅客の方に接する表に出る人だけでなく、本当に数多くの裏方の方々も含めた、多くの人の努力の賜物によって支えられています。
雪の深い空港で、窓越しに黄色いゴツい車両を見かけたら、空港で除雪を行う人達に思いを馳せていただけるとありがたいです。
【了】
Writer: 種山雅夫(元航空科学博物館展示部長 学芸員)
成田空港隣の航空科学博物館元学芸員。日本初の「航空関係専門学芸員」として同館の開設準備を主導したほか、「アンリ・ファルマン複葉機」の制作も参加。同館の設立財団理事長が開講した日本大学 航空宇宙工学科卒で、航空ジャーナリスト協会の在籍歴もある。
当たり前っちゃ当たり前かもしれませんが、
海外の場合、ヘルシンキ空港は、
こういう雪の処理はお手のもんだそうで…