帰れない船乗り40万人 なぜ? 物流支える商船員の交代問題 下船しても苦難の道のり

改善するのは相当先 できることをやっていくしか

 船員にとって最大のストレスは、現在もなお「先が見えない」ことだといいます。たとえば、乗船中に親が亡くなったため下船手続きを取ったものの、「下りられそうだ」「いや、ダメになった」というサイクルを3回繰り返し、ようやく下船できたというケースもあるそう。

 各国の規制もコロコロ変わるほか、飛行機に乗る前に数日待機、あるいは母国に帰っても州をまたぐたびに待機、といった状況で、下船後の休暇期間をあっという間に消化してしまうこともあるとのこと。それでも、年単位で決まっている乗船スケジュールを変えることは、物流を滞らせるため難しいといいます。

 実はこうした状況が、わたしたちの生活にも影響を及ぼしています。いま、世界的な巣ごもり需要の高まりなどで、特に日用品を運ぶコンテナは運賃が高騰していますが、これには、各国の規制や陸上での突発的な陽性者の発覚などで、船がスケジュール通りに運航できないことが関係しているとのこと。貨物の需要に対して「船が足らない」状態となり、必然的に運賃が上がる構図だそうです。

「どの国も自国民を守るのが第一ですから、規制をどんどん変えてしまいます。それは仕方のないことですから、とにかくできることをやっていくしかありません。そういう中では、日本政府はどこの国よりもバランスよくやっていただいていると思います」(日本郵船 高橋さん)

Large 210127 change 03
交代が難しいなかで、船員はSNSなどを通じてメッセージを発信している(画像:日本郵船)。

 そして、こうした状況は今後も長期にわたって続くと日本郵船は見ています。世界全体が「正常」に戻らなければ、改善されないからです。

「国によって新型コロナのワクチン接種体制も異なります。また、ワクチンの効果も長くは持続しないとも言われています。ワクチンを継続的に打ち続けられる体制が揃わなければなりません」(日本郵船 高橋さん)

 日本郵船はもちろん、IMOも各国へ状況の改善を働きかけているといいます。高橋さんは、各国の規制が目まぐるしく変わることにも理解を示すものの、不合理な追加措置は世界中の物流がスローダウンするのでやめてほしいとも。その言葉が印象に残りました。

【了】

【写真】医療従事者並みの完全防備で船へ向かう交代要員

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。

2件のコメント

  1. 鎖国やロックダウンの政策を批判する意見も多いですが、各国が入国規制するのは当然の措置でしょう。
    特に医療が乏しい途上国では、感染拡大が致命傷になります。
    本文の通り船員さんが感染するリスクもあり、感染した船員が乗船すればダイヤモンド・プリンセス号の様な悲劇になると思います。
    各国の外務、航空会社も含めての対応が問われているのかと思います。知恵を出して対応するしかないのでしょう。
    強いて言えばトラック輸送(1台当たり10~20t)の場合、長距離輸送は鉄道(1編成400~600t)を活用する逃げ道もありますが。

  2. ここまでくると、ずっと働いてるほうが気が楽かもしれないね。
    バブルでいうなら、船というバブルに閉じこもるって感じで。