防衛産業は本当に旨味なし? 相次ぐ撤退 国防の危機打開に経団連も注目の「MRO」とは【Merkmal】

大手が獲得に乗り出す「MRO」事業

 アフターマーケットであるMRO(整備・補修・オーバーホール)は完成品の製造に比べて地味な印象を受けるが、生産数の多いアメリカ製防衛装備品のMRO事業の市場は大きい。また、完成品の製造に比べて安定した収益が見込めることから、獲得に乗り出す企業もある。

 たとえばボーイングは自社製品の包括的なサポート事業「ボーイング・グローバル・サービス(BGS)」部門を立ち上げ、将来的には民間航空機部門と防衛宇宙部門に並ぶ企業の柱とすることを目論んでいる。

 日本企業はどうか。アメリカ製防衛装備品の維持整備については、F-35戦闘機のアジア太平洋地域の整備担当企業に三菱重工業とIHIが選定されており、2019年2月13日付の日本経済新聞は、2025年以降にF-35の戦闘システム構成品を整備するアジア太平洋地域の拠点も日本に置かれ、三菱電機が受注する見込みであると報じている。F-35はアジア太平洋地区だけでも航空自衛隊、韓国空軍、オーストラリア空軍、シンガポール空軍が導入しており、同地域に展開するアメリカ軍やイギリス軍機などのMROも手がけることができれば、より事業規模は拡大する。

 防衛装備庁と経団連は前述した意見交換会で、防衛装備品と技術の海外移転に関して、官民の連携をいっそう強化し、防衛装備庁、商社、製造企業が連携した「事業実現可能性調査」を推進していくことでも一致している(令和2年度から事業化)。これは相手国の潜在的なニーズを把握して、提案に向けた活動を行う事業だが、この調査の過程で、対象となっている東南アジア諸国が運用するアメリカ製防衛装備品のMROに対するニーズが判明したとの話もある。

 振り返って日本は、少子化による若年労働力の不足により、将来すべての防衛装備品の完成品製造事業を継続するのは困難だ。こうした状況下で日本の安全保障にとって不可欠な存在である国内防衛産業を維持していくためには、高い技術力と豊富な経験という財産が活用できる、外国製装備品のMRO事業に活路を見出すべきだと筆者は思う。

【了】

提供:Merkmal
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【写真】これも輸入の装備品 続々増える「オスプレイ型」

Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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コメント

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1件のコメント

  1. 記事の傾向が乗りものニュースとかぶっているようですが、こちらを軍事専用にしてくれたらタイムラインが整理できて助かります。そして臆することなく乗りもの要素が無いないようも取りあげることができると思います。