開業した横浜のロープウェー 眼下に続く「廃線跡」は何? 近代史を牽引した鉄路

JR桜木町駅前から地上40mを進む都市型ロープウェー「ヨコハマ・エア・キャビン」が開業しました。上空から見る赤レンガ倉庫などベイエリアの景色は格別ですが、ここはあえて、眼下に伸びる「廃線跡」を眺めつつ、歴史をたどって見ましょう。

全長630mの「歴史の空中散歩」

 JR桜木町駅前から、大岡川河口近くの海をひとまたぎして「新港」と呼ばれるエリアに向かうロープウェー「ヨコハマ・エア・キャビン」が2021年4月22日(木)に開業しました。その距離はわずか630mほどですが、年間4万隻以上の船が発着する横浜港を地上40mの高さから一望できるため、通常の交通機関というよりも一種のアトラクションに近く、カップルや家族連れにとって「空中散歩」できる体験は、思い出深いよい機会になるでしょう。

 このロープウェーのもう一つの楽しみ方として、「あえて下を見る」ことを提案します。ロープウェーのほぼ真下の海上を斜めに横切る遊歩道「汽車道」は、かつて横浜港の物流を担い「横浜臨港線」などと呼ばれた貨物線(正式には東海道本線の貨物支線)の廃線跡です。その上を横切っていくため、大正初期に海上に作られた築堤や、世界的にも鉄橋建設のパイオニアといわれる「アメリカン・ブリッジ」社製のトラスがかかった鉄道橋跡を、ドローンのような「上から目線」で眺められます。

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開業したヨコハマ・エア・キャビン。ゴンドラの下の「汽車道」は廃線跡(乗りものニュース編集部撮影)。

 もちろん、汽車道の先にある新港エリアには赤レンガ倉庫をはじめ、建設から1世紀を超える産業遺産も多く、ヨコハマ・エア・キャビンの始発点も、1872(明治5)年に開業した日本初の鉄道の終着点、初代横浜駅のほぼ直上にあります。ロープウェーから見下ろし、見渡せる景色は、横浜港のみならず日本の鉄道・物流の歴史そのものでもあるのです。

 さかのぼれば、このエリアは1859(安政6)年に港が築かれるまでほぼ海で、文字通り「横に長い砂浜」(現在の「日本大通り」近辺)の上に人口500人ほどの「横浜村」があるのみ、現在の桜木町駅はその対岸の浜辺だったといいます。横浜港は、関内近辺(現在の横浜スタジアム周辺)まで広く埋め立てられ、欧米諸国の船が発着する国際港ならびに外国人の居留地ができたことで、その歴史が始まりました。

【地図/写真】ロープウェーと周辺図/臨港線跡を写真でたどる

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