地球温暖化で「全地形対応車」に脚光 ロシアで軍用バリエーション次々登場の背景

履帯の車両を前後につなげたような「全地形対応車」は、特殊な部類の車両には違いありませんが、ロシアではほかの花形兵器に交じり軍事パレードに参加するほど重視されているそうです。その背景に地球温暖化…どういうことでしょうか。

「全地形」は伊達じゃない! ロシアDTシリーズはどんなクルマ?

 全地形対応車は、ロシアの厳しい大地を走破するために生まれた特殊なクルマです。第2次世界大戦では、ドイツ軍はこの大地に半分装輪車+半分装軌車というハーフトラック(トラック=履帯=いわゆるキャタピラ)で挑みましたが、ソ連は装軌車を2台連結するトラック+トラックというアイデアを思い付いたのです。

 荒地走破用の連結装軌車の研究は、旧ソ連のイシンバイ輸送機械建築工場(イシンバイトランスマッシュ)で1960年代初頭に始まったといわれます。それまで豪雪地帯や沼地では、積載量5tを超える車両は動けませんでした。

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DT-30連接部。ドライブシャフトと車体挙動を連携させる油圧システムで連結(画像:Vitaly V. Kuzmin, CC BY-SA 4.0 <https://bit.ly/3npJ9XO>, via Wikimedia Commons)。

 この研究はDTシリーズとして完成し、1971(昭和46)年にソ連の国家試験を受けます。水陸両用機能も備えまさに全地形対応車というにふさわしい車両で、軍用だけでなく資源開発、学術研究など幅広い支援車として重宝されました。またロシア国内だけでなく、北極や南極にも持ち込まれています。

 1980(昭和55)年にはソ連陸軍にも採用され生産が始まり、積載量10tの小型DT-10、同20tの中型DT-20、同30tの大型DT-30が作られました。

 いずれのタイプもエンジンが付いているのは前部車で、後部車へはドライブシャフトで動力が伝えられます。大型のDT-30の定員は5名、全長16.08m、全幅3.1m、履帯幅は2m、最小旋回半径は17.3mです。エンジンはT-64戦車にも使われた形式で、プレヒーターにより気温が零下50度でも始動可能、路上最高速度は37km/h、水上航行速度は5km/hとなっています。

 ちなみに民間用の標準価格は約3万5000ドル(約380万円)だといいます。生産台数は不明です。

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履帯のアップ。ゴムタイヤ転輪や履帯は雪上車と同じ構造になっている(画像:Vitaly V. Kuzmin, CC BY-SA 4.0 <https://bit.ly/3eGTafn>, via Wikimedia Commons)。

 ロシア軍はおおよそ戦闘に向きそうにないDT-30に、戦闘車両として対空機関砲と短射程対空ミサイル複合システム「パンツィリSA」、そして中距離対空ミサイルシステム「トールM2DT」を搭載しました。最近ではさらに自走迫撃砲「2S39マグノリア」搭載型も見られるなど、各種武装を施したバリエーションが次々に登場しています。

 ロシア軍はこれらの全地形対応車を部隊として運用し、2017年3月には北極圏のノボシビルスク、コルテニー諸島でトライアルを実施しました。数週間で1200kmを走破するという、軍事演習というより極地探検だったのですが、100以上の実験や課題を実施し、極地での戦闘能力を確認したといいます。

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