地球温暖化で「全地形対応車」に脚光 ロシアで軍用バリエーション次々登場の背景

ロシア軍が北極圏で活動するワケ

 ロシア地上軍は広大な戦域に合わせて編成や装備を最適化し、兵器も多様化、多品種化しています。全地形対応車DTシリーズは、戦車や装甲車に比べれば使える場所も限られ数も少ないですが、これほど派手な動きを見せているのはロシアが北極圏を重視しているからです。

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2017年3月に行われた北極圏のロシア地上軍演習の様子(画像:ロシア国防省)。

 まだまだ未開で探検の地と思われるような北極圏は、現在、世界中が注目するホットスポットになっています。2021年3月23日に発生したスエズ運河座礁事故の際、北極圏回り航路が迂回路として本格的に検討されたように、地球温暖化で北極海の航行可能時期が増え、アジアと欧州を繋ぐ有望な航路と見なされるようになっているのです。すでに周辺各国はもちろん、地形的に隣接していない中国までプレゼンスを確保しようと動いています。そして北極海を囲むロシアにとっては、地政学的に国益に直結する地域です。

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2017年3月に行われた北極圏のロシア地上軍の演習に参加したDT-30の3連結の輸送車(画像:ロシア国防省)。

 当然、日本も無関係ではありません。日本と欧州を繋ぐ航路は、北極海を通るとスエズ運河経由に比べ約60%まで日程を短縮できるといいます。4月23日には岸防衛大臣が「気候サミット気候安全保障セッション」でのオンライン演説で、「北極海は、将来、戦略的に重要な海域となる可能性があり、北極海における航行の自由が確保されることは、世界の平和と安定のために極めて重要である。」と触れています。昨年には海上自衛隊練習艦隊が、北極海を初めて航行して存在感を示しています。

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2021年2月北極圏で行われたロシア地上軍の全地形対応車を使った戦闘訓練(画像:ロシア国防省)。

 全地形対応車は単に走破力のあるクルマというだけなく、ロシアの地政学的地位を支える力となる重要なクルマになっているのです。

【了】

【画像】日本の全地形対応車といえば「レッドサラマンダー」

Writer: 月刊PANZER編集部

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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