「駆逐艦、おまかせで輸出たのむ」フランス大海軍の要請 100年前の日本どう応えた?

アラブ級駆逐艦のそれぞれの名前の由来

1番艦「アルジェリアン」(アルジェリア在住イスラム教徒の意)
2番艦「アンナミト」(仏領インドシナ・アンナン地方在住のアンナン人の意)
3番艦「アラブ」(仏領在住のイスラム教徒アラビア語族の意)
4番艦「バンバラ」(仏領西アフリカ方面在住のバンバラ語族の意)
5番艦「オーヴァ」(仏領マダガスカル島原住民の中産階級の意)
6番艦「カビル」(仏領在住のベルベル人の1部族名)
7番艦「マロケン」(仏領モロッコ在住のイスラム教徒の意)
8番艦「サカラバ」(仏領マダガスカル島在住の部族名)
9番艦「セネガレ」(仏領セネガル在住の複数の部族の意)
10番艦「ソマリ」(仏領ソマリ在住のソマリ族の意)
11番艦「トンキノワ」(仏領インドシナ・トンキン地方在住のアンナン人の意)
12番艦「トゥアレグ」(仏領サハラ砂漠地方在住の部族名)

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フランスのアラブ級駆逐艦の原型となった旧日本海軍の樺型駆逐艦。写真は1番艦の「樺」(画像:アメリカ海軍)。

 なお、アラブ級駆逐艦の原型となった樺型は、航洋型ではあるものの、旧日本海軍の区分では二等駆逐艦に分類される中型駆逐艦でした。満載排水量は約750トンで、同時期のフランス製駆逐艦とそれほど変わらない大きさです。

 フランス海軍では、この規模の駆逐艦は遠洋への派遣よりも沿岸警備に使用することが多く、日本が建造したアラブ級も同じような用途で用いられています。そのためか、第1次世界大戦においてアラブ級の戦没艦はなく、12隻すべて1930年代中頃に除籍のうえ解体されました。

 先進国の仲間入りをした直後の日本が、「先輩先進国」たるフランスの要望を受けて、戦争に間に合うように急ぎ建造したアラブ級は、華々しい戦績こそ残しませんでした。しかし、陸軍装備の生産優先で軍艦不足に悩むフランス海軍の「海外からの助っ人」として、未曽有の大戦争の渦中でその役割を着実にはたしたといえるのではないでしょうか。

【了】
※一部修正しました(6月3日16時07分)。

【写真】艦名が不明な地中海に派遣された樺型駆逐艦

Writer: 白石 光(戦史研究家)

東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。

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コメント

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1件のコメント

  1. インドネシア相手だと踏み倒されそうだな