横浜のバス「激セマ・急坂区間」5選 ゆずも歌った地元の難所 380万市民を支える運転テク
たった1.3km、10分の路線が「超黒字路線」
アップダウンのきつさは、バスの利用にもつながっているようです。
【旭区・保土ヶ谷区】介護施設くぬぎ台~鶴ヶ峰駅南口:坂道が生んだ「超黒字」路線
・経由するバス:横浜市営バス75系統(介護施設くぬぎ台~鶴ヶ峰駅南口)
保土ヶ谷区の「くぬぎ台団地」と相鉄の鶴ヶ峰駅を結ぶ横浜市営バス75系統(くぬぎ台線)は、営業係数51.4(100円稼ぐ経費が51.4円。2019年度)という、市営バスでナンバーワンの高収益路線として知られています。
その秘密は、わずか200mほどで10m以上の高低差を行き来する、鶴ヶ峰駅南東の坂道にあります。駅側では見下ろしていた新幹線の高架を数秒後にくぐり抜けるほどの坂道ですが、横にある歩道はこの区間だけ50段近い石段となっており、近距離にもかかわらず徒歩や自転車ではなくバスを利用する人々が多いのも、確かにうなづけます。バスはその後、丘の上にある「くぬぎ台団地」まで登り、その先の谷底にある「介護施設くぬぎ台」まで下って終点となります。
ここまで全長約1.6km、終点まで乗車しても9分程度で、本数の多いくぬぎ台団地止まりの区間便だと1km少々。運賃は均一料金(220円)がベースのため、「最小限(短距離)の営業経費で正規運賃」を稼げることが、黒字を生んでいると推測されます。
【保土ヶ谷区・西区】聖隷横浜病院入口・元久保町付近:丘の上の病院へ
・経由するバス:相鉄バス「浜4」(横浜駅西口~保土ヶ谷駅東口)、「旭4」(美立橋~桜木町駅)、横浜市営バス32系統(保土ヶ谷車庫前~関内駅北口)など
これらの路線は、JR保土ヶ谷駅南東の丘陵地に位置する聖隷横浜病院の輸送を担います。たとえば相鉄バスの「浜4」の場合、「浜松町」から「岩井町坂上」バス停まで2kmほどの区間で、こんもり盛り上がった丘陵の上を走り、両端ではU字型のカーブを描いて台地を上り下りします。
聖隷横浜病院の前後はいずれの路線も、中型のバスがようやくすれ違える程度の2車線道路を通ります。市街地に近いにもかかわらず、冬場には坂道が凍結することもあるそうです。
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横浜市域をカバーするバス路線は、山岳部の長時間走行も多いものの、均一運賃がベースとなることから、前出した神奈中11系統のように、乗客が多いにも関わらず厳しい経営状況に置かれる場合もあります。運転手の不足も相まって「必要とされても減便」が当たり前となる中で、眺めが良くちょっとしたスリルもある横浜のバス路線を、「走る展望台」のつもりで乗車してみてはいかがでしょうか。
※一部修正しました(6月11日11時50分)。
【了】
Writer: 宮武和多哉(旅行・乗り物ライター)
香川県出身。鉄道・バス・駅弁など観察対象は多岐にわたり、レンタサイクルなどの二次交通や徒歩で街をまわって交通事情を探る。路線バスで日本縦断経験あり、通算1600系統に乗車、駅弁は2000食強を実食。ご当地料理を家庭に取り入れる「再現料理人」としてテレビ番組で国民的アイドルに料理を提供したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」など。
恥ずかしいですね。日本の貧弱なインフラ。私権が厚く保護されているから仕方がない。横浜にも何十箇所も、横断歩道や交差点を塞いでバスが停車する不適切な停留場があるそうですよ。