「なんちゃってSUV」なぜ主流に? タフだったちょっと昔の車たち その揺らがぬ価値
バブルが弾けて「なんちゃってSUV」登場
しかし、1994(平成6)年にトヨタのRAV4、翌年にホンダのCR-Vが登場してから、風向きが変わります。RAV4とCR-Vは、RVブームに乗って生まれたSUVでしたが、従来のRVと違って乗用車のモノコック構造を採用していたのです。
このため当時は「なんちゃってSUVだ」というような悪口もありました。本格的な悪路走行をすれば、もちろんフレーム構造のクロカンには敵わないからです。
しかし、実際のところ日本のユーザーのほとんどが街乗り中心で、頻繁に悪路を走るわけではありません。それであれば乗り心地と燃費に優れる方が好まれるもの。そして気づけば、日本市場にはモノコック構造のSUVばかりが増え、悪路走行ができるSUVとして残ったのは、トヨタのランドクルーザー、そしてスズキのジムニーだけという状況になりました。
とはいえ世界市場に目を移せば、現在でもフレーム構造のSUVが数多く販売されています。トヨタでいえば、ランドクルーザーを筆頭に、フォーチュナー、4ランナー、セコイアがあります。トヨタ以外では、三菱自動車のパジェロスポーツ、日産にはアルマーダ/パトロールのほか、ピックアップトラックのナバラ/フロンティアから派生したテラといったフレーム構造のSUVが販売されています。
つまり、悪路走行をする国や地域であれば、今もフレーム構造のSUVのニーズは根強く存在するというわけです。たまたま日本市場は本格的な悪路走行の性能が必要なかったため、フレーム構造のクロカンSUVは舞台から降りただけということ。
そもそも日本車の昔から今に変わらぬウリは、「壊れないこと」にあります。過酷な環境で使う人こそ、そうした日本車の信頼感を求めるのでしょう。ランドクルーザーに対する世界での高い評価は、そうした日本車の象徴とも言えるのではないでしょうか。
【了】
Writer: 鈴木ケンイチ(モータージャーナリスト)
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車専門誌やウェブ媒体にて新車レポートやエンジニア・インタビューなどを広く執筆。中国をはじめ、アジア各地のモーターショー取材を数多くこなしている。1966年生まれ。
悪路を走れる車が減ったことにより、自然が保たれたりして?
『すべからく』の誤用やめーや。