実際に検討された「夜行新幹線の定期運行」なぜ実現せず? 寝台新幹線も造られたが…

かつて検討された「夜行新幹線」の定期運行 「新幹線の寝台車」も実在したが…

 かつて、「夜行新幹線」の定期運行が検討されたこともあります。

 東海道新幹線が東京~新大阪間で1964(昭和39)年に開業したのち、山陽新幹線が博多まで建設されることになると、夜行列車の需要が想定されました。

 ただ深夜帯は、線路のメンテナンスが必要です。

 そこで考えられたのが、博多行きと東京行きの夜行新幹線が深夜にすれ違うことになる、新大阪~岡山間での「片側通行」です。

 いわば、道路工事における片側交互通行と同じ。例えば、今日は上り線を夜行新幹線の走行に使い、下り線はメンテナンスを実施、明日は逆に下り線を走行に使い……という形が考えられました。

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線路がもう1本増やせるようになっている山陽新幹線姫路駅(画像:写真AC)。

 そのため新大阪~岡山間では、多くの箇所で上り線と下り線の行き来ができるようポイントが設置されたほか、駅での対向列車待ちなどを夜行新幹線がしやすいよう、姫路と相生は線路の増設を考慮して設置されました。

 そして1973(昭和48)年には、車内に寝台設備を備えた「961形試作電車」が製造され、1975(昭和50)年に山陽新幹線は博多まで開業。しかし「夜行新幹線」の定期運行は、実現しませんでした。

 運行による騒音、振動の発生が沿線住民の理解を得ることが難しかったことなどが、その理由とされています。この1975年頃は、実際に新幹線の騒音や振動に対する訴訟が起きていた時期です。

【了】

【写真】個室も存在 昭和48年 実際に製造された「寝台新幹線」961形試作電車

Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)

鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。

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コメント

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2件のコメント

  1. 寝て移動する寝台列車なのだから新幹線の高速性はいらないのよね。
    減速して走るのなら在来線で事足りるわけで、わざわざ設備メンテナンス時間削ってまで新幹線でやるメリットがない。
    (ネタとしては面白いですが)

  2. 新大阪駅のある時の改良工事で上下線間のどこかに(片渡りではなく)シザースクロッシングが挿入されたために片線のみ使うことができなくなったと聞きましたが。
     隣の線路でフルスピードで営業列車が走っている中で反対線で線路内作業することは宜しくないとされ東海道新幹線開業1年ほどでそれは禁止されたといいます。徐行させればOKなのでしょうか?