東京メトロと都営地下鉄の統合「実現しない可能性」高まる 新線建設のかわりに

「一元化しなくてもやり方あるのでは?」

 東京メトロにとって完全民営化は、事業の自由度向上などがメリットとして考えられますが、都営地下鉄との統合は、経営状況がよりよい東京メトロ側にとって、デメリットになりかねません。

 このように東京メトロと都の利害がかみ合わないことから、これまで国と都による東京メトロ株の売却、完全民営化がなかなか進んでこなかった面があります。

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2013年、当時の猪瀬都知事が言うところの「バカの壁」が撤去され、乗り換えが容易になった九段下駅の東京メトロ半蔵門線と都営新宿線(乗りものニュース編集部撮影)。

 そうしたなか出された今回の答申。株式売却を国と都が進めるべきとあるものの、一元化については触れられておらず、参考資料で「これまで一元化について議論した」「近年はメトロと都営でサービス一体化、改善が進められている」とある程度です。

 これはつまり、「補足すると、むかし一元化も考えたけど、してなくても改善が進んでいるし、しなくてもやり方はあるのでは?」と受け取ることもできるでしょう。

 今回の答申は都が一元化をあきらめ、東京メトロが目指す完全民営化のため株式を売却するので、かわりに大きな事業費負担が必要になる都内の新線建設を東京メトロが請け負ってください、完全民営化の妨げにならないよう、必要な支援は国と都でするから……という、いわば“取引”をしてはどうかという提案に見えます。もしかすると、すでにその筋書きで進んでいるかもしれません。

【了】

【地図】今回の答申では「新地下鉄の実現」も大きく進展 その3路線とは?

Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)

鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。

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コメント

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5件のコメント

  1. 以前は民営化は新線建設が一巡してからと言っていたような気がします。建設費の1/3は自費を投じなければならないのに成算が疑問視される住吉〜豊洲など押しつけられてメトロは嬉しいのでしょうか。今後も路線の設定改廃が政策に左右されるなら株を売るのに苦労するかもしれませんね。

  2. 組織として統一できなくとも、料金体系つまり切符代、所謂交通費だけ通しにすればいいと思います。これも都営側の赤字解消が難しいなどの問題があるかも知れませんが、実現すると都営より安い営団(現東京メトロ)の金額に統一され、お得感が増して、同じルートで「たまには都営も使おう」という気になるなどの誘発効果が得られ、かえって赤字解消しやすいと思います。三田線と南北線が共用する目黒~白金高輪間だけの利用が営団の金額に統一しているのと同様にすることです。

  3. 昔、東京都に金が無かったから
    国の機関
    「帝都高速度交通営団」が
    地下鉄の建設を進めただけ‼️

  4. 地下鉄を品川に延伸した際の計画図を作成してみました。
    全線地下にすると地下通路を新たに設けたりする必要がある分工事費と工期が膨れ上がるので南北線や都営三田線の品川駅はJRや京急直上の高架駅にすることがベストであると思います。
    railway.chi-zu.net/163297.html

  5. 利用者側はメトロ⇔都営の乗り換えで余計に金がかかるのが気になるだけで、そこさえ解消すれば会社が一緒になる必要は無いかなと思います。

    個人的には初乗りさえ統一されれば距離運賃が違ってもいいと思ってます。