ボーイング737「飛行中もタイヤ丸見え」の謎 カバーなしでも爆売れ半世紀 実は効果抜群?
実は悩みのタネでもある旅客機の主脚温度 「カバーなし」の効果は絶大?
初期のボーイング737がターゲットとする短距離路線では、離陸してすぐ脚をしまい、わずか15分程度巡航し降下、脚をおろして着陸、駐機場へ到着後、45分程度したらまた次の便として出発する――といった運航スケジュールが考えられるでしょう。
実は離着陸の際、主脚はとてつもない高温にさらされます。とくに着陸時のタイヤとディスク・ブレーキは、エンジンを除けばその温度の高さはナンバーワンでしょう。着陸の接地時のスピードは300km/hほど。その状況から主脚にあるディスク・ブレーキで制動をかけるため強い摩擦熱が発生します。一時的にブレーキ・ディスクは摂氏300度を超えることもあるそうです。
そのままでも1時間くらいすれば摂氏100度以下になって問題はないそうなのですが、先述のとおり、737の場合、到着後1時間以内に出発するケースを考えて設計されています。
ディスク・ブレーキの冷却は、安全運航の上では非常に重要です。もし冷却が十分でない場合は、次の空港での着陸時にブレーキ性能が落ち、所定の距離で止まれない、最悪オーバーランしてしまうケースもあります。
最近の機体ではディスク・ブレーキの個所にセンサーを備え、コクピットで温度管理をしているほどです。またボーイング747やエアバスA321neoなどでは、ディスク・ブレーキ外側に強制廃熱ファンが取り付けられている機種もあり、温度が下がるまでファンが回り続ける旅客機も。それが機体に装備されていなくても、ブレーキ・クーリング・カートというディスク・ブレーキ冷却用のカートがあり、駐機中に取り付けて廃熱します。
ただ、到着から次便までの出発時間(ターン・アラウンド)が短い路線では、それでも充分冷却できないかもしれません。そこで、短距離路線用ジェット旅客機の一部には、主脚のタイヤ・カバーを、あえて取り付けない設計になっている機体があり、737がその先駆け的なモデルといえるでしょう。ちなみに、この設計は、現代のリージョナル・ジェットでも見ることができます。
では、どこでタイヤを冷却するのかというと、スバリ上空です。巡航高度1万mとすれば外気温は氷点下50度にもなります。その冷却効果は抜群でしょう。
もちろん、機体の空力性能にマイナスの影響がないかということは、設計段階で計算していると考えられます。ここは、脚カバーの位置と飛行時間の兼ね合いが、ひとつの判断基準かと思います。
胴体下面の凸凹は、ほかの箇所ほど空力的な影響は大きくありません。737の場合、主脚支柱の部分は主翼下面の一部となっており脚カバーが付いていますが、タイヤ部分のカバーの位置は胴体下面になっており、主翼と胴体の接合部などを取り巻く空気の流れからも、多少のへこみはあっても影響が少ないと見られます。また、へこみ具合も最小になるように設計されているように見え、737設計者の高い技術力を垣間見るポイントとなっています。
蓋の有無での冷却効果の差というのは、外気温-50度という環境で特筆すべき内容なのでしょうか?外気温-50度の中、40分近く飛行して、100度だったブレーキディスクの温度を保持するほうが難しいと思いました。誰でも思いつく疑問だと思うので、この効果があるというのであれば、計測値(理論値でも結構ですが)示したほうが著者の名誉を保てると思います。