復調遠く 高速バスの今 コロナ禍で進む減便・統合 でも新路線は意外と多い?
観光地の高速バス新路線、今後は増加か? アウトレットも「観光地」に
この補助金には、単なるコロナ対策に留まらない目的があります。日本の観光地は、もともと、貸切バスで訪れる団体客に比重を置いていました。そのため、都市や空港などからの公共交通が不便な箇所が目立ちます。他方、国内客も、また訪日観光客も、旅行形態は団体から個人旅行へのシフトが進んでいます。
旅行会社のバスツアーが、特定の日に絞って設定され、その日についてはほぼ満席で走るのと対照的に、高速バスなどの公共交通は、原則として毎日運行し、通年で安定した乗車率が求められます。前者が「狩猟民族型」、後者は「農耕民族型」ビジネスといえます。観光地への路線は、認知度が上がり乗車率が安定するまで時間がかかる傾向にあり、新路線という「種」を蒔いてもすぐには「収穫」につながらず、バス事業者としてもなかなか挑戦できませんでした。
「足」が不便で個人観光客が増えない観光地と、利用者数が増えないから路線開設に二の足を踏むバス事業者という「ニワトリと卵」の突破を図るのがこの補助金です。前年度の「Go Toトラベル」事業が従来型の旅行会社支援を意識していたのと異なり、コロナ後の観光のあり方を見据えた攻めの政策と言えます。「Go To」では観光施設扱いされなかったアウトレットモールが、この補助金では対象となった点も現実的です。やがて感染が収束し「Go To」が再開されるようなことがもしあれば、今年度こそ、個人旅行や公共交通を意識した運用となることを期待します。
なお、こうした観光路線への単年度の補助金は、地方自治体などにより以前からも行われてきましたが、路線として成功し独り立ちした事例は全くと言っていいほど見当たりません。補助金に頼るあまり集客努力が疎かになりがちな点や、公共交通を上手に組み合わせて予約にまでつなげる個人旅行者向けのサービスが不足している点が理由です。コロナ禍に苦しむ観光地やバス事業者への国の支援を感謝し活用しつつ、個人旅行市場の開拓はバス業界自身の課題と捉え、市場ニーズに真摯に向かい合うことが求められています。
【了】
Writer: 成定竜一(高速バスマーケティング研究所代表)
1972年兵庫県生まれ。早大商卒。楽天バスサービス取締役などを経て2011年、高速バスマーケティング研究所設立。全国のバス会社にコンサルティングを実施。国土交通省「バス事業のあり方検討会」委員など歴任。新聞、テレビなどでコメント多数。
そして紹介されない京阪バスの京都駅~万博記念公園~ネスタリゾート神戸線(7/22運行開始)。
京都駅~万博記念公園間はJ1ガンバ大阪がホームゲーム開催時には「ゲーム便」という臨時バスまで出るのに……。
現在運休中の大半の路線が「当面のあいだ」運休で、実質永久に運休つまり廃止前提であるということであります。実際に本当に廃止に至った便や路線がありますから、非常に深刻な状況に変わりないのが現状です。今後も、そしてコロナ禍明けもこの状況が続く事が予想されます。今のご時世でテレワークやリモートなど、なんでもかんでもオンライン化が進む中、乗り物で移動という概念がますますなくなってしまう危機もあるかもしれません。
車椅子活動家、傍観できる限り陰ながら応援してるんですけど、彼らは高速バスについては諦めているのですかね?
どこでもドアの早期開発が急務ですね