下町の"狭隘"バス新路線 文京区「本郷・湯島ルート」運行開始 文豪が愛した坂は一方通行
東京都文京区のコミュニティバス「B-ぐる」が、2021年9月30日から新路線「本郷・湯島ルート」の運行を開始しました。どのような利便性と特色がある路線なのでしょうか。
本郷・湯島地区と周辺各駅をアクセス
東京都文京区のコミュニティバス「B-ぐる」に、2021年9月30日から新路線「本郷・湯島ルート」が運行開始しました。
文京区のコミュニティバスとしては「千駄木・駒込ルート」「目白台・小日向ルート」に続き3路線目。春日一丁目(東京メトロ後楽園駅、都営地下鉄春日駅)を起終点に、JR御茶ノ水駅、東京メトロ新御茶ノ水駅、湯島駅、上野広小路駅などを経由します。1周の所要時間は50分で、午前8時前から1時間3本の頻度で運行されています。運賃は100円(大人・こども同額)で、交通系ICカードの使用も可能です。発売額300円の「B-ぐる」一日乗車券も利用できます(購入は現金のみ)。
湯島地区は周囲に東京メトロ千代田線や丸ノ内線をはじめ鉄道の線路が密集していますが、駅自体は少なく、地区内を通るバス路線も無いため、湯島駅や御茶ノ水駅などへのアクセスには15分近い徒歩移動が必要でした。このバスはその「ラストワンマイル」を補うものとなります。
乗車したこの日は運行開始2日目でしたが、雨天なこともあってか朝の便はどれも乗客はそこそこあり、小型バス車内の空き席はわずかの状況。湯島天神入口と湯島四丁目で大半の客が降りたほか、春日一丁目→順天堂医院、湯島四丁目→御茶ノ水駅などの利用が見られ、客が入れ替わり立ち替わりで乗り降りするといった様子でした。
なお、起点となる春日一丁目バス停は、都営バスの同名のバス停とは別の場所で、後楽園駅の南側、東京ドームシティ沿いにあるため注意が必要です。
さて、湯島は武蔵野台地の最東端であり、かつては海に面していました。そのため、湯島地区は周囲よりも突出して標高が高くなっており、急坂が多く見られます。この湯島地区を周回する「本郷・湯島ルート」も、ルート上で大なり小なりの坂道を上り下りしていくのが特徴です。特に湯島駅~湯島天神入口間では、心臓破りの急坂「湯島中坂」が待ち構えており、小型バスも唸り音を上げて上っていきます。上野広小路駅や御徒町駅方面からへ湯島地区行く場合、自転車でも降りて押さないと上れない急坂ばかりのため、バスは便利な足となりそうです。
本ルートの中でも特に下町情緒あふれるのが、本郷三丁目駅から春日駅北東側へ斜めに伸びる「菊坂」です。この周辺には明治から大正にかけて、名だたる文豪が居を構えていました。樋口一葉は18歳から菊坂に住み、小説家への夢を志したといい、宮沢賢治が24歳の時に岩手県の実家を飛び出して東京に来たあと、印刷所で働きながら1年弱住んだのが菊坂と言われています。また、歌人の石川啄木も22歳の時にこの地に滞在。有名な「たはむれに 母を背負ひて そのあまり 軽きに泣きて 三歩あゆまず」の歌もこの頃に生まれています。
菊坂と言いながらもそこまでの急勾配ではありません。しかし菊坂の北東側は急な上り坂、南西側は下り階段があり、台地辺縁の極端な高低差を車窓に見ることができます。
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