「空の縦割り打破」→航空便数10%増可能に 進む国の一大プロジェクト「空域再編」とは
「横割り」空域にはどんなメリットが?
これまで「縦割り」空域では、異なる管制部をまたぐエリア、つまり「関所」もしくは「市境」を越えるたび、航空機同士の間隔を広げる必要がありました。
一方で、「横割り」となる新たな空域であれば、ひとたび上昇して1万200mを超えてしまえば、降下するまで別の管制部に移管する必要がなくなるので、わざわざ間隔を開ける必要もありません。たったこれだけの工夫ですが、これが年間処理機数を20万機以上も増やすことを可能とする仕組みです。
そして、横割り空域でもたらされる良い効果は、効率アップだけではありません。
たとえばシステムトラブルや自然災害の発生、テロ攻撃など、何かしらの理由で、ひとつの管制部が機能しなくなった際、これまでの「縦割り」の場合、その管制部が担当しているエリアがまるごと空白となってしまう恐れがありました。「横割り」では、残りふたつの管制部が高度を上下することで補完することができます。
「縦割り」のままでも隣接する管制部が何とかすれば良いと思うかもしれませんが、これまで見たこともないエリアの空港、航空路をいきなりやれと言われてやれるほど、航空管制は簡単ではありません。「横割り」であれば、普段やっている領域の上(下)をカバーすればいいので、少なくとも、これまでよりは遥かに容易に対応できるでしょう。
「縦割りを廃止してマルチにこなせる体制に変える」という一般企業と何ら変わらない構造改革が、日本の空にも有効ということです。
【了】
Writer: タワーマン(元航空管制官)
元航空管制官。航空専門家。管制官時代は成田国際空港で業務に従事する。退職後は航空系ライター兼ゲーム実況YouTuberに。飛行機の知識ゼロから管制塔で奮闘して得た経験をもとに、「空の世界」をわかりやすく発信し続けている。新書「航空管制 知られざる最前線」(2024/5/28河出書房新社)
東京上空の管制圏返して貰えば?
馬鹿馬鹿しい。
セスナ172飛ばすのは良くて、民間機はダメ。家の上Nナンバーよく飛んでるよ。ホークだけど。
広い空域を処理できるだけの管制通信、処理システムが機械的にも人的にも洗練されたというのも、きっとこの再編の背景にあるのでしょう。
一方で、この国では当時決まりがなかったゆえに起きたニアミス事故に対して、「国民常識」に沿って最高裁が判断し、管制官に刑事責任を負わせたことがあるということを忘れてはいけません。
再編によって管制官やシステムの開発・管理の現場に萎縮効果がかかり、空の安全が脅かされるような事がないように願うばかりです。