護衛艦「いずも」に初めて戦闘機が発着艦 その時ひるがえった「旗」は何を意味する?
本来の意味とは違うけれど・・・歴史を作った旗りゅう信号
今回の「いずも」によるF旗の掲揚は、海上自衛隊にとっての新たな歴史の始まりを告げるものといっても過言ではないでしょう。このように、時として旗りゅう信号は単なる通信信号という枠を超え、歴史の1ページを刻むことがあります。
たとえば、日露戦争中の1905(明治38)年5月27日、ロシアのバルチック艦隊を日本の連合艦隊が迎え撃った日本海海戦において、連合艦隊旗艦「三笠」にアルファベット旗の「Z」が掲げられました。
国際信号書に基づけば、Z旗は「私は引き船(タグボート)が欲しい」、もしくは漁場においては「私は投網中」ということを意味するのですが、ここでは「Z」がアルファベットの最後の文字であることから、「ここで敗れれば後はない」という意味を込めて、乗員の士気高揚のために「皇国の興廃この一戦にあり、各員一層奮励努力せよ」という意味で用いられたのです。
今後、いずも型護衛艦のマストにはF旗が掲揚される機会が増えていくことになると思われますが、「後はない」という意味でZ旗が掲揚されるような機会は、来ないことを願うばかりです。
【了】
Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)
軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。
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