今にもブっ飛んでいきそうなカーイラスト/プラモの作り方 映画『カーズ』裏に伝説の男
ディズニー・ピクサーのアニメ映画『カーズ』は、その企画当初、クルマを擬人化して魅力あるキャラクターにする手法が模索されました。若いアニメーターにその手法を伝授したのが、かつてプラモデルのパッケージなどを手掛けていたデイブ・ディールという人物。その伝説的な仕事を振り返ります。
クルマの絵に命を吹きこむ「ジェスチャー」とは
デイブ・ディールが自動車イラスト(もしくは漫画)を描く際に最も重要視していたのは、彼いわく「ジェスチャー」でした。たとえ静的なイラストであっても、まるで車体がエンジンの振動で揺れているかのように、スタートではタイヤがホイールスピンをしているかのように、マフラーが排気音を奏でているかのように描く。それが彼のいう「ジェスチャー」でした。
その手法を成功させるためには、実物のクルマの構造や走行時の挙動を熟知していなければなりません。また、たとえ漫画であっても、描きこめるディテールを正確に再現してこそ、リアリティが出るというもの。決して子供だましであってはならないのです。
ジョン・ラセターに請われたデイブ・ディールは、約半年かけてピクサーの若いアニメーターたちに、クルマの絵に命を吹き込む方法を教え込みました。こうしてカーズのキャラクターに命が宿ったというわけです。
この仕事は当時、すでに70代半ばを迎えていたデイブにとって、非常にやりがいのあるものであると同時に、肉体的にはいささか過酷なものだったようです。『カーズ』第1作目の公開からわずか2年後、彼は亡くなります。アーティストとして、すべてをやり尽くしたかのような生きざまでした。そして、彼の創造力と情熱は『カーズ』を通して若いクリエーターたちに受け継がれ、いまなお世界中の人々を楽しませているのです。
なお『カーズ』とデイブ・ディールの関わりについては、2006(平成18)年に出版された『The Art of Cars(英語版)』という書籍で詳しく紹介されています。
【了】
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