【鉄道のある風景今昔】一期一会だった北陸鉄道小松線

2023年度末開業予定の北陸新幹線金沢~敦賀間。途中の小松駅でも新幹線の駅が建設されています。かつては、この小松駅から東に向かって「北鉄電車」こと北陸鉄道の小松線が伸びていました。

この記事の目次

・わずか6km弱の短距離路線
・開業半年で破産宣告
・廃線後の小松駅

【写真枚数】全8枚

わずか6km弱の短距離路線

 北陸本線の小松駅からはふたつの私鉄が出ていました。ひとつは最後の非電化軽便として有名な尾小屋鉄道ですが、もうひとつ小さな鉄道があまり注目されていませんでしたが、ひっそりと出ていました。それが北陸鉄道小松線です。

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小松駅の構内全景。小松線の線路は国鉄北陸本線に対して直角に行き止まる形の頭端式ホームであった(1980年3月11日、宮下洋一撮影)。

 同線は小松駅から鵜川遊泉寺駅までのたった5.9kmの小さな鉄道で、駅の数は8駅、交換可能駅は途中の加賀八幡駅のみでした。小松駅は北陸本線とほぼ直角に線路が突っ込むような形で立地しており、終点の鵜川遊泉寺駅までは、ほとんど真っ直ぐと言っても良い線形の路線でした。当初は金名線の釜清水駅を目指したといいますが、それも未完に終わっています。

開業半年で破産宣告

 開業は1929(昭和4)年で、何と開業後半年で破産宣告を受けるという波乱のスタートでした。その後社名を白山電気鉄道から小松電気鉄道に変更、戦火が激しくなるにつれ沿線に軍事施設が設けられたことなどもあって県内の交通の統合による統制の圧力が厳しくなり、統合に反対していた同社社長を警察署に拘留中に北陸鉄道に統合させられるなど穏やかではない形で、北陸鉄道の一員になっています。隣接する尾小屋鉄道は太平洋戦争中の陸運統制令による石川県内の鉄道路線統合からも外れ、最後まで独自性を保ったのとは対照的でした。

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小松駅付近を走行するモハ3005。同車は1963年に衝突事故で大破して、復旧時に張り上げ屋根、ノーシルノーヘッダーの近代的な車体となった(1980年3月11日、宮下洋一撮影)。
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1969年当時の小松駅の風景。奥に北陸本線の架線柱が見える(1969年5月、網谷忠雄所蔵)。

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Writer: 宮下洋一(鉄道ライター、模型作家)

1961年大阪生まれ。幼少より鉄道に興味を持つ。家具メーカー勤務を経て現在はフリー作家。在職中より鉄道趣味誌で模型作品や鉄道施設・車輌に関する記事や著作を発表。ネコパブリッシングより国鉄・私鉄の車輌ガイド各種や『昭和の鉄道施設』・心象鉄道模型の世界をまとめた『地鉄電車慕情』など著作多数。現在も連載記事を執筆中。鉄道を取り巻く世界全体に興味を持つ。

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