軽自動車の“飛行機版” 世界で大ウケの新ジャンル航空機「LSA」とは 取り残されつつある日本

欧米では「LSA」と呼ばれる軽量スポーツ機のカテゴリーが急成長を続けています。この分野は、いまや1ジャンルとして確立されており、欧米では制度化されるほど。一方、日本では基準すらないため飛ばせません。

軽量スポーツ機「LSA」誕生の経緯

 北米やヨーロッパなどの航空先進国では軽量スポーツ機、通称「LSA」(Light Sports Aircraft)と呼ばれる新しい小型機のカテゴリーが導入されてから、早くも10年が経過しました。

 自家用機というと、日本ではまだ「お金持ちのホビー」というイメージが強いものの、世界的に見るとそのハードルは下がっており、自動車と同じように保有するようになっています。その一助となっているのが低価格で購入・維持可能なLSAであり、続々と登場する新型機のなかには水陸両用機や電動飛行機なども含まれ、まさに百花繚乱ともいえる市場に成長しています。このカテゴリーは、年を経るごとに拡大し続けていることから、航空産業における一番の成長分野としての地位を確立しつつあります。

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イタリアのフライング・レジェンド社製「ツカノ・レプリカ」。ブラジル製のツカノ軍用練習機をスケールダウンしたもので2022年夏より出荷開始の予定。100馬力エンジンを搭載、巡航速度は240km/h(画像:フライング・レジェンド)。

 このLSA制度が導入された背景には、低迷を続けたアメリカの小型機産業に起因します。遡ること40年ほど前の1980年代、アメリカではPL(製造物責任)法が施行されたことにより製造物賠償責任の保険料が高騰、その影響をもろに受けて航空機の製造コストが上昇し、結果、機体価格が跳ね上がりました。そのため自家用機やビジネス機などの販売機数は激減、企業の利益が減ったことで、機体メーカーのなかには廃業や倒産に追い込まれるところも出ました。

 これに焦りを感じた業界団体とアメリカ政府は、ジェネラルアビエーション産業再生促進法(General Aviation Revitalization Act)を1994(平成6)年に制定し、メーカーの負担軽減を目指したものの、その法案の経済効果は限定的であったため、抜本的な対策の模索が続きました。

 一方で当時、低迷を続けていた完成機メーカーを尻目に新型機の開発と生産が続けられていたのが、キット機とも呼ばれるホームビルト機でした。ユーザー自身が組み立てを行うことでPL法を回避できるホームビルト機は1990年代以降も順調に発展を続けていましたが、小型機産業全体の底上げには不十分でした。そこで、さらなる規制の緩和を目指して各国で制度化されていったのが「LSA」と総称される航空機の新しいカテゴリーだったのです。

【エミレーツ航空の機体も】百花繚乱! 多種多様な軽量スポーツ機たち

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コメント

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2件のコメント

  1. 空ぶ自動車とか言う以前に、この種の飛行機への規制の緩和や法の改正が必要なのではないか? 日本ははやりに乗るのは早いけど、それを深化させることがヘタ。だから世界から取り残されて、あげくガラパゴス化する。

  2. 日本はG7で唯一云々とあるが
    何故が足りないんじゃない?
    例えばシベリアで何故サーフィンが流行らないかみたいなさ、地政学的な違いがあるんだから。
    日本は圧倒的に平地が少ない。だから離着陸できる空港がほどよい場所に作れない。そのため飛行機の利便性を享受しにくい。他にもいろいろ理由はあるけど、飛行機自分で操縦ことが一般化するほどの興味はないんだよ。
    例えば日本は四方を海に囲まれてるけど船舶操縦免許持っとる人は一般的ではないでしょう?そうなってない状態には、相応の理由がある。