トンガ救援の英哨戒艦 地球の真裏から駆け付けた? いえ近くにいました その理由

なぜ2隻はインド太平洋地域に配備された?

 それでは、なぜイギリスは5年もの長期にわたってこの2隻をインド太平洋地域に派遣することにしたのでしょうか。それは、この地域に対してイギリスが強い関心を示しているためです。

 EU(ヨーロッパ連合)からの離脱後、イギリスは広く世界とのつながりを強めていく方針を示しています。そのなかでも、人口が多く、また主要な海上交通路も数多く存在するインド太平洋地域は、イギリスにとって非常に魅力的な存在となっています。

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トンガに到着した「スペイ」艦上にて、荷降ろしを待つボトル入飲料水の山(画像:イギリス海軍)。

 そこで、この地域での存在感を強め、かつその安全を維持するために、イギリスはこの数年間で多くの軍艦を派遣してきているのです。その象徴が2021年にインド太平洋地域への長期展開を実施した、空母「クイーン・エリザベス」を中心とする空母打撃群の派遣でした。この派遣は日本を含む地域の国々に強力なメッセージを送ったものの、さすがにずっとインド太平洋地域にとどまることはできません。そこで、「テイマー」と「スペイ」を5年間という長期にわたってこの地域に配備し、イギリスの永続的な存在感を示そうとしているわけです。

 さらに、この2隻は先ほど説明したように非常にコンパクトな艦艇です。そのため、あまり大きな艦艇が入港できないような中小国の港にも問題なく入港できるほか、そうした国々が保有する、能力が限定的な海軍艦艇や海上警察機関ともスムーズに共同訓練が実施できると考えられます。そのため、この2隻はこうした地域内の国々とイギリスとのあいだの連携に際して大きな役割を果たすことが期待されるのです。

 今回のトンガにおける災害では「スペイ」が支援活動に従事していますが、一方で「テイマー」は北朝鮮への制裁の実効性を確保するため、東シナ海での瀬取り監視活動に従事しています。この2隻、見た目の小ささとは裏腹に、その存在感は非常に大きなものとなっているのです。

【了】

火山灰に覆われたトンガ王宮 ほか「スペイ」の救援活動の様子

Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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コメント

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2件のコメント

  1. トンガの周りはイギリスの保護領なんだから、居てもおかしくないだろに。

    その事踏まえた上での記事なの?

  2. >>艦の運用に携わる46名の乗員

    まあ、哨戒艦だからこのくらいの人数で運用できるんだろうな。
    軍艦は24時間動いているから基本8時間とか6時間勤務で実働人数は1/3とか1/4くらいで動かしているんだろうけど。

    それとトンガ王国は、イギリス連邦参加国であって保護領ではないからね。
    トンガ王国が保護領なら、カナダやオーストラリアも保護領って事になる。