原付ナンバー即日交付の原則崩れる 神戸市の発表にバイク店困惑 理由は行政オンライン化

郵送物が到着した日が申請日 廃車も注意

 神戸市の人口は約152万人、県庁所在地として全国7番目の大都市です。排気量125cc以下の原付バイクのプレート交付は12万1845台(2021年)あります。

 原付バイクの軽自動車税の課税は、毎年4月1日を基準日に、その日に登録があるバイクへ課税、廃車されていれば非課税にします。乗用車などの課税と違って、原付バイクの税金は廃車後の月割り還付はありません。年度替わり前後に申請が集中することも考えられます。そのため神戸市法人税務課は、オンライン申請は申請者の入力した日、郵送の場合は市役所に到達した日が申請日と説明。新しい申請方法では、こうした日数を考慮して申請する必要があります。

「課税の基準となる4月1日の前後にはフォークリフトやトラクターなど小型特殊にかかる申請も重なる。軽自動車税の窓口で手続きを求める車両のほとんどは生活の足だったり、仕事のために使ったりする車両なので素早い手続きが必要。協会への業務委託の時も即日交付ができないほど窓口が混乱したが、オンライン受付の移行後も、たった1か所の即日交付の窓口に殺到することは目に見えている」(バイク店経営者)

 また、新たに送料の負担が生じます。神戸市はオンライン申請を選択した場合「当面の間」プレート送料を市が負担することを表明していますが、郵送の場合は申請者負担です。

「当面は負担するといっても、それがいつまで続くかはわからない。手続きは新車購入だけでなく、譲渡、廃車でも必要。送料はユーザーがそのたびに負担することになる。即日交付ができるというのであれば最低限、窓口を西、北、東と3か所ほどは残してくれないと現実的ではない。そもそも日本中でできていることが、神戸市のような政令指定都市でできなくなるのは理解できない」(神戸市近隣のバイクショップオーナー)

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原付ナンバープレートの申請用紙(中島みなみ撮影)。

 行政手続きのオンライン化は、国もデジタル庁を創設。「国、地方自治体、民間事業者、国民その他の者があらゆる活動において情報通信技術の便益を享受できる社会の実現」を掲げ、個々の手続き・サービスが一貫してデジタルで完結する「デジタルファースト」を基本原則の一つにしています。しかし神戸市のデジタル化は、リアルでワンストップ即日完結していたサービスを分断しかねません。

 こうした批判を受け神戸市は3月2日、システム運用開始のための住民説明会の開催を市内で予定しています。生活を便利にするはずのオンライン化は何をもたらそうとしているのか。軽自動車税の課税に直結する神戸市の対応は、約1700ある自治体で進むオンライン化の試金石となりそうです。

【了】

Writer: 中島みなみ(記者)

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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コメント

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1件のコメント

  1. 市役所側の負担の視点が抜けてませんか?人員を無尽蔵に増やせば住民サービスは確実に良くなりますがそれはできませんよね。
    デジタル化によってどれだけ税が減らせるのかが重要だと思います。
    原付のナンバーの交付は緊急性のある仕事ですか?