成田空港 世界でも稀な“落下物対策” 南から進入のみ「洋上で脚降ろして着陸せよ」 なぜ?

成田特有の“落下氷対策”はどのようなもの?

 成田空港で実施されている“落下氷対策”は、成田に北風などが吹き、南側(滑走路34L/34R)へ着陸するため、九十九里浜から陸地に進入する際に実施されます。九十九里の海上を飛んでいるうちに、ギア(車輪)を降ろさなければいけないのです。

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2022年2月、「フラップ・トラック・フェアリング」が落下したJA14KZ(乗りものニュース編集部撮影)。

 これはギアを降ろした際の振動で、機体に貼り付いた氷塊が落下することがあるため、人家のある地上ではなく、洋上で氷塊を落とすための工夫だそう。

 氷の元になる水は、機体から漏れた水が上空で凍ったケースが多いとされてます。かつてはラバトリー(化粧室)からの排水が多く、最近は胴体下部の排水ドレーンからの例もあったようです。この運用は成田空港が“ほぼ国際線専用”だった時代から始まっています。フライト時間の短い国内線と比べ、長距離国際線では、フライト時間が長いぶん、氷塊が広がる条件が増える――というのも、このルールの採用にいたった一因とも。

 成田空港では、実際にシップが九十九里浜の前でギア・ダウンしているか、2週間ほど実地調査をしているそうです。調査は双眼鏡を用いて肉眼による調査とのことで、北風が吹いている冬の作業となるので、凍えるように寒い……と、ある人から聞いたことがあります。

 一方で、滑走路は一方通行ではなく、航空機は風向などによって両方向から進入します。成田空港でも同様で、北側(16L/16R)へ着陸するパターンもあるわけです。ただ、北側進入の場合は、なぜか内陸で脚を降ろす、というのがスタンダードのようです。

 この理由については断定できないものの、北側進入の場合洋上では高度が高すぎるというのと、南側進入を使うことが多い冬季のほうが、寒さのため氷が溶けにくく、落下氷が発生しやすい、ということは言えるかもしれません。

【了】

【超貴重!?】成田の珍! AIP実画面&世界唯一の「ジャンボ丸洗いマシーン」

Writer: 種山雅夫(元航空科学博物館展示部長 学芸員)

成田空港隣の航空科学博物館元学芸員。日本初の「航空関係専門学芸員」として同館の開設準備を主導したほか、「アンリ・ファルマン複葉機」の制作も参加。同館の設立財団理事長が開講した日本大学 航空宇宙工学科卒で、航空ジャーナリスト協会の在籍歴もある。

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