ロシア戦闘機生産に赤信号 実は脆かった産業構造 カギのひとつは半導体…どうするの?

ロシアの戦闘機産業が立ち行かなくなると…考えられることは?

 2022年3月2日の国連総会緊急特別会合では、ロシアを非難しウクライナからの即時撤退などを求める決議案が賛成141か国、棄権35か国、反対5か国という賛成多数で採択されました。

 棄権した国の多くは、ロシアから戦闘機など同国製兵器の供与を受けていました。しかしそれらの国も、もはやロシアから部品の調達さえままならないとなれば、ロシア製兵器を維持することは困難になるはずで、また「世界の敵」となってしまったロシアからの新規調達をためらう国も出てくることでしょう。

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2022年3月現在開発中のSu-57ステルス戦闘機。AESAレーダーを各所に配置した広い索敵範囲が特徴だが、その見通しは明るいとは言えない(画像:UAC)。

 最悪、ミグやスホーイは過去のものとなってしまうかもしれません。そのトリガーを引く可能性があるとすれば、恐らく中国です。これまで中国製戦闘機はおもにエンジンの信頼性に問題があり、ロシアの支援が不可欠だったものの、それも改善されつつあります。また中国は、ガリウムヒ素の次世代を担う「窒化ガリウム」半導体の生産技術を有しており、自国で生産を完結できる態勢を目指しています。

 ロシア製戦闘機は中国の支援なくして成り立たなくなり、中国とロシアの立場は逆転するかもしれません。そうなれば世界の戦闘機市場でロシアが持っていたパイは、すっかり中国に奪われてしまうことでしょう。

 料理に例えるならば、ロシアは有名店、ユナイテッド・エアクラフトはそこで働くシェフです。彼らの手がけたミグやスホーイといったロシア料理は世界中で愛されていました。しかしそれは食材を売ってくれる相手とお客がいるから成り立っていたということを、彼らは忘れてしまいました。今後、恐らくは訪れるであろう2度目の「ソ連崩壊」は、前回よりも厳しいことが予想されます。

 筆者(関 賢太郎:航空軍事評論家)の専門は航空分野なのであえて戦闘機に限りましたが、軍需、民需問わずロシア国内のあらゆる産業で同様の問題が生じると考えます。

【了】

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Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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1件のコメント

  1. 勝者は参戦しないで兵器だけを提供する西欧と中国の武器商人です。