核兵器の使用は違法や否や? 国際司法裁判所もキレが悪い極限状況での選択

ロシアが核兵器を使用することは問題ないの?

 それでは、ロシアの核兵器による威嚇やその使用は法的にどう評価されるのでしょうか。

 まず、現在のロシアが自衛の極限状態にあるかどうかというと、客観的に見て、そうした国家の存亡が危ぶまれる状況にあるとは評価できないでしょう。むしろ、ロシアによる軍事侵攻を受けているウクライナの方が、それに近しい状態にあると考えられます。

 次に、そもそもロシアのウクライナに対する軍事侵攻は国際法上、違法なものであって、自衛権に関する要件を満たすものでもないため、ウクライナに対する核兵器による威嚇やその使用は、これまでに行われている武力行使とあわせて違法と判断されるでしょう。また、NATO(北大西洋条約機構)諸国に対するものに関しても、現状においてはNATO諸国がロシアに対して違法な軍事攻撃を開始しているわけでもなく、またそのような状況の発生が差し迫っているわけでもないため、これもやはり違法と整理されるでしょう。

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アメリカ海軍の戦略原潜「ネブラスカ」によるトライデントII SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)発射試験の様子(画像:アメリカ海軍)。

 核兵器に関しては、公海上の軍艦や砂漠地帯の敵兵力を戦術核兵器によって限定的に攻撃することは、人道法の原則や規則に適うのではないかとの見方を示す国もありますが、これに関してICJは先述した勧告的意見の中で判断を回避しています。自衛の極限状態の解釈も含めて、核兵器をめぐる問題は未だに複雑なものとなっています。

【了】

戦術核兵器を懸架するF-15E「ストライクイーグル」

Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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コメント

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2件のコメント

  1. 核兵器を使用して勝利すれば正義、敗北すれば悪
    ただこれだけの事かと思いますよ

    • 現代のアメリカ人はそんな事言わなくなったんですよ。昔の人の考えですよ。