高速バスの「共同運行」異変相次ぐ 新ペアで攻勢 コロナ減便から復活できない事情も

「空中戦」の得意な事業者と組む 新たな関係

 共同運行と異なる提携関係も登場しました。祐徳自動車(佐賀県)は、2021年12月、後発事業者であるウィラーと提携し、佐賀・福岡~大阪線に参入しました。祐徳は歴史ある乗合バス事業者ですが、様々な経緯から、しばらく高速バスを運行していませんでした。今回の再参入は、許認可上は祐徳の自主路線ですが、座席管理システムや車両はウィラー仕様で、「ウィラー・エクスプレス」として運行します。

 しかし、老舗だけに地元メディアでの露出も多く、集客は順調です。マーケティング面において、ウェブの活用や個性的な車両作りといったウィラーが得意な「空中戦」を、地元乗合事業者ならではの「地上戦」が補完しているのです。

 なお、22年4月からは同じ組み合わせで佐賀・福岡~広島線にも参入しましたが、この路線で同じ効果があるとは限りません。佐賀県を含む九州各地と京阪神の間は昔から太い流動があり、大阪線では地元事業者の「神通力」により佐賀県の需要をうまく掘り起こせたのに対し、後者の路線は福岡、広島両都市間の需要がほとんどで、その「神通力」が通用しないからです。

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ウィラー・エクスプレスのイメージ。祐徳自動車もこの塗装で運行する(画像:ウィラー)。

 京王/アルピコや、ウィラー/祐徳の事例を見ると、共同運行のスタイルが当初の姿から変化していることが見て取れます。事業エリアの問題は制度改正により既に無関係ですし、単に車庫や窓口の活用だけの関係ではなく、それぞれの強みを活かす戦略的パートナーシップに変わろうとしています。

 一方で、コロナ禍を経て、既存のパートナーシップがうまく機能しないケースも出てきています。コロナ禍で多くの路線が減便もしくは運休し、現在は、収束後も需要が完全には回復しないとみて、近隣路線の統合や、コロナ前より便数を減らした新ダイヤの協議が各地で行われています。しかし、その協議はなかなか進みません。企業としての経営方針や現場の事情が、共同運行先どうしで異なるからです。

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コメント

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1件のコメント

  1. 誤解を招きかねない部分があるので、あえて指摘させて頂く。
    たとえば、西東京バスだが、1999年に分社化して発足した多摩バスに、高速バス部門を移管していたことがあり、2011年に再度多摩バスを吸収合併というかたちで西東京バス持ちとして復活するまでは、系列とはいえ他社に任せていたわけで、一時期撤退していることになる。いずれも京王グループとして京王(帝都)電鉄を親会社としている。
    また、京王バスは実は、京王(帝都)電鉄の直営がまずあるほか、そこから分社化された京王バス南、京王バス東の二社の、計三社があり、高速バス部門も受け持ちの変遷を経て、なかなか複雑な状況になっており、外野からの把握は実はややこしい。
    これに類似する例は、全国的に枚挙にいとまがなく、バス会社の分社化が増えた昨今、共同運行会社は外ヅラ以上に実はコロコロ変わっている例が増えている。
    記事を見ると、業界通は別にして、たとえば京王バスはまるで一社で運行してきたと勘違いされかねない可能性もあるし、西東京バスも多摩バスに任せて撤退していた時代がそれなりにあるので、勘違いされかねないので、あえて指摘させて頂いた。
    なお、たとえば多摩バスが吸収され、元通りに西東京バスに復するにあたっては、大多数の旧多摩バス社員が継続的に西東京バス社員として勤務を続けてはいる。各地の類例も、逸れに準じてはいると思う。

    記者は、バス関連の記事を書かれるなら、業界のそうした度重なる再編による変化にもう少し留意して、誤解を招かないよう配慮が望まれる。