高速バスの「共同運行」異変相次ぐ 新ペアで攻勢 コロナ減便から復活できない事情も

「よし、元通りの運行を再開しよう」とならないワケ

 例えば、一方の会社は高速バス専門の営業所を持ち、もう一方は路線バス中心の営業所が高速バスも担当、というケースはよくあります。乗務員の公番(勤務シフト)は、前者は「昼行高速バス中心に、たまに夜行高速バス」、後者では「路線バス中心に、たまに昼行や夜行の高速バス」となります。乗務員の勤務(拘束)時間や、前後の勤務との間隔は法令などで決まっており、前者では曜日別のダイヤ編成が難しく、後者では早朝深夜のダイヤを嫌う傾向があります。

 しかし、「早朝出発で構わないから大都市側での滞在時間を確保したい」という地方側のニーズは大きいですし、多くの路線で需要は週末に集中します。経営体力にも乗務員数にも余裕がない今、従来どおり、同じ便数を公平に運行する形態に拘れば、それらのニーズに対応できません。

 そこで、多少の不公平はあっても、需要に寄り添う柔軟なダイヤ設定が求められています。これはダイヤ作り上の課題ですが、ウィラーと祐徳のように、集客についてもそれぞれの強みを持ち合う姿勢が重要です。

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名鉄バスは両備バスの岡山~名古屋線に参入。名古屋側の停留所も名鉄バスセンターに変更となる(画像:名鉄バス)。

 ところで現在、首都圏や関西など大都市圏で、高速バスターミナルの新設計画が相次いでいます。2030年までには首都圏で、その数年後には関西で、不足気味の「発着枠」に余裕が生まれることが考えられます。その時、地元で強い集客力を持つ地方側の事業者が、40年連れ添った大都市側の共同運行先を見限り、新たなパートナーと戦略的に提携を始めたら……。逆に、その地元での集客力を地方側事業者はあと10年維持できるのか……。

 各事業者は、新型コロナ感染収束後の市場ニーズに謙虚に耳を傾け、需要に合ったサービスを提供することが求められています。

【了】

Writer: 成定竜一(高速バスマーケティング研究所代表)

1972年兵庫県生まれ。早大商卒。楽天バスサービス取締役などを経て2011年、高速バスマーケティング研究所設立。全国のバス会社にコンサルティングを実施。国土交通省「バス事業のあり方検討会」委員など歴任。新聞、テレビなどでコメント多数。

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コメント

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1件のコメント

  1. 誤解を招きかねない部分があるので、あえて指摘させて頂く。
    たとえば、西東京バスだが、1999年に分社化して発足した多摩バスに、高速バス部門を移管していたことがあり、2011年に再度多摩バスを吸収合併というかたちで西東京バス持ちとして復活するまでは、系列とはいえ他社に任せていたわけで、一時期撤退していることになる。いずれも京王グループとして京王(帝都)電鉄を親会社としている。
    また、京王バスは実は、京王(帝都)電鉄の直営がまずあるほか、そこから分社化された京王バス南、京王バス東の二社の、計三社があり、高速バス部門も受け持ちの変遷を経て、なかなか複雑な状況になっており、外野からの把握は実はややこしい。
    これに類似する例は、全国的に枚挙にいとまがなく、バス会社の分社化が増えた昨今、共同運行会社は外ヅラ以上に実はコロコロ変わっている例が増えている。
    記事を見ると、業界通は別にして、たとえば京王バスはまるで一社で運行してきたと勘違いされかねない可能性もあるし、西東京バスも多摩バスに任せて撤退していた時代がそれなりにあるので、勘違いされかねないので、あえて指摘させて頂いた。
    なお、たとえば多摩バスが吸収され、元通りに西東京バスに復するにあたっては、大多数の旧多摩バス社員が継続的に西東京バス社員として勤務を続けてはいる。各地の類例も、逸れに準じてはいると思う。

    記者は、バス関連の記事を書かれるなら、業界のそうした度重なる再編による変化にもう少し留意して、誤解を招かないよう配慮が望まれる。