「モスクワ」撃沈のウクライナ製ミサイルより優秀? 陸自12式SSM 離島防衛の切札

陸自の地対艦ミサイルが持つメリット

 本格的な上陸作戦はある程度の航空優勢を獲得したのちに行われます。なぜならば、敵は自衛隊の防空網を破壊して自分たちの輸送機などを日本に着陸させたいからです。その一方で、敵の揚陸艦なども近づいてきます。飛行機では運べる量に限りがあるため、大部隊や重物量の輸送には船が欠かせないからです。

 それに対抗するのが88SSMや12SSMなのです。仮に、日本が航空優勢を奪われた場合、航空自衛隊のF-2戦闘機は対艦ミサイルを4発積めるとはいえ、自由に飛び回ることが難しくなります。海上自衛隊のミサイル艇なども敵機の脅威があるなかで敵艦の攻撃に向かうのは厳しいでしょう。

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演習場を走る12式地対艦誘導弾(武若雅哉撮影)。

 ただ、陸上から対艦ミサイルを発射する88SSMや12SSMなら、事前に陣地展開することさえできれば山地や森林地帯に潜み、敵の不意を突いて攻撃することができます。そのような形で、敵地上部隊の上陸を阻止するか、もしくは遅延させることができれば勝機が見えます。

 日本はウクライナのように隣国と地続きではないため、洋上で撃破できれば敵の戦車や装甲車などは海の底へと沈むので、純粋な損耗を敵に与えることができます。もし、敵の地上部隊が上陸できなければ、日本は占領されることはありません。

 というのも、いくら敵の航空機が自由に飛んでいても、彼らには土地を占領する能力がないからです。土地を占領するには、必ず地上部隊が必要になります。また、たとえ航空優勢を取られたとしても、敵の戦闘機や爆撃機は長く日本上空に滞空することはできませんし、その隙をついてアメリカ軍の支援を受けることもできるでしょう。

 アメリカのように敵を圧倒できるほど、強力な空軍力や海軍力を持っていない日本にとって、88SSMや12SSMは非常に有効な装備です。陸上自衛隊でも203mm自走りゅう弾砲や多連装ロケット弾発射機、155mmりゅう弾砲FH70など、かつての主力装備については軒並み削減が進められる一方、地対艦誘導弾だけは増勢が続いています。

 そこから鑑みると、12SSMのような地対艦誘導弾は、離島や海峡防衛という観点から、今後も増えることはあれど、減ることのない装備ともいえるのかもしれません。

【了】

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Writer: 武若雅哉(軍事フォトライター)

2003年陸上自衛隊入隊。約10年間勤務した後にフリーフォトライターとなる。現場取材に力を入れており、自衛官たちの様々な表情を記録し続けている。「SATマガジン」(SATマガジン編集部)や「JWings」(イカロス出版)、「パンツァー」(アルゴノート)などに寄稿。

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