観光列車に頼りすぎた? 赤字深刻のJR木次線どうなる 観光客で盛況も「足」にはならず

地域のメリット=鉄道会社のメリットとは限らない? 交通維持の役目は地元自治体へ

 木次線の沿線自治体は、これまで最大級の観光資源である「奥出雲おろち号」のために、物品販売や地域総出の熱烈な出迎えなどの協力を行ってきました。しかし、利用促進の施策は複数名で県内外から木次線を利用する際の移動費の助成など、その多くは観光客の呼び込みに重点を置いたものです。

 島根県雲南市、奥出雲町や広島県庄原市にとって、この列車は宿泊客・団体客を呼び込み、他の観光地に回遊させるための欠かせない手段でもあり、リピーターの中には“地域のファン”に変化し、ふるさと納税などでさらに支援をする人も少なくありません。しかしツアーバスからの乗り継ぎも多いこの列車は、必ずしもJR西日本にとってメリットが大きいものではなかったのではないでしょうか。

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青春18きっぷシーズン以外の出雲横田~備後落合間は、乗客も少なく、とても静か(宮武和多哉撮影)。

 同社は新型コロナウイルスの影響で2000億円以上の単年赤字に転落、早急に経営の見直しを迫られ、かつ「奥出雲おろち号」は以前からの話し合いで、車両老朽化のため2022年内での運行終了が決定しています。木次線の沿線自治体が今後どのような策をとっていくから現時点ではまだ不明ですが、今回の情報公開は地元の意思と関係なく、交通の担い手が鉄道会社(JR西日本)主導から自治体・地元主導に転換するきっかけとなるでしょう。

 たとえば奥出雲町では高齢化率(65歳以上の人口比)が近年4割を超え、交通事故・重大事故のすべてに高齢者が絡むなど、誰もが他人事ではない状況です。木次線が鉄道としての本来の役割を果たせなくなっているなか、バスやタクシーを維持するための対策も併せて求められています。

【了】

【木次線の地図&「盛況だけど大赤字」の現状 写真で見る】

Writer: 宮武和多哉(旅行・乗り物ライター)

香川県出身。鉄道・バス・駅弁など観察対象は多岐にわたり、レンタサイクルなどの二次交通や徒歩で街をまわって交通事情を探る。路線バスで日本縦断経験あり、通算1600系統に乗車、駅弁は2000食強を実食。ご当地料理を家庭に取り入れる「再現料理人」としてテレビ番組で国民的アイドルに料理を提供したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」など。

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