ウクライナ「ドンバスの戦い」は本格的な戦車戦になるか ロシアの「力押し」有利な戦局に?

第2次大戦時と同じような状況になるか?

 ロシア第1次攻勢時は、ロシア軍に対して戦車をはじめとする機甲兵力の数で劣るウクライナ軍が善戦できましたが、ドンバスでは、彼我の戦車が真正面からガチンコでぶつかり合う「典型的な」戦車戦が行われているようです。

 また、このような戦場では、第2次世界大戦時と同様に、空からの対戦車攻撃が効果的なのも変わらないようです。このため、ウクライナは西側から供給されていた歩兵携行対戦車ミサイル「ジャベリン」や、対空ミサイル「スティンガー」などに加えて、T-72のような主力戦車(MBT)、機甲部隊に同行して「防空の傘」を提供できる自走式対空ミサイルや自走式対空機関砲、さらには、Su-25「フロッグフット」地上襲撃機や攻撃ヘリコプターなどといった「重兵器」の供給を求めているといえるでしょう。現代の大規模戦車戦に不可欠な重兵器となると、ウクライナはロシアに比べて数的に劣るからです。

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開けた場所で撃破されたロシア軍のT-72B戦車(画像:ウクライナ軍参謀本部)。

 思い出されるのは、ドンバス地方が舞台となった第2次世界大戦時の独ソ戦における戦車戦です。数的には劣勢ながら戦術や個々の戦車の性能に優れるドイツ軍に対し、ソ連軍は、ドイツ軍よりはるかに大きな損害を被りながらも数的優勢を背景とした「力押し」で目的を達成するケースがたびたびありました。もしかしたら、今回のドンバスの戦いでも、同様のことが起きているかもしれません。

 なお、現在続いているドンバスの戦いは、ロシア第1次攻勢時のような「戦局」に関するニュースがあまり報じられていませんが、これは、彼我双方の報道規制もさることながら、メディアが入り込みにくいほど激しい戦いが繰り広げられている証拠のように思えます。だからこそ、その戦局の動きがいっそう気になるところです。

【了】

【これからも脅威か?】ウクライナ軍が使う個人携行ミサイルほか

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Writer: 白石 光(戦史研究家)

東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。

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