飯田線が「アニメ聖地巡礼発祥の地」って? 30年続く作品との縁 名物「下山ダッシュ」
「アニメ聖地巡礼の元祖」と言われるワケ
いまでこそ、『ガールズ&パンツァー』の舞台となった茨城県大洗町や、『ラブライブ!サンシャイン!!』の舞台となった静岡県沼津市など、「アニメツーリズム」とも呼ばれる旅行のあり方は珍しくありませんが、『究極超人あ~る』は、その先駆けとも言えるものでした。
いつしか作中で自転車がたどったルートを再現する自転車レースが伊那市役所の有志を巻き込んで開催されるようになり、地域と作品ファンの交流も深まるように。そして田切駅前にある聖徳寺が土地を提供、作品のファンが共同出資して2018年に「アニメ聖地巡礼 発祥の地」の碑が完成したのです。
「あ~る」といえば「下山ダッシュ」本当に実現可能?
さらに『究極超人あ~る』の中で行われる「下山ダッシュ」は、鉄道ファンにも知られるようになりました。
飯田線は飯田市内の下山村~伊那上郷間で、飯田駅方面へΩを描くように迂回する線形となっています。両駅間の距離は6kmほどで、電車は4つの途中駅に停車し、最短13分で到達しますが、直線距離としては2kmもありません。道路をダッシュして、いったん下車した電車にまた乗車する“遊び”が「下山ダッシュ」です。
もともとこれに近い行為は、伊那上郷駅が最寄りである飯田高校の生徒の間で行われていたそうです。電車は飯田駅で長めに停車することも多く、下山村駅から学校へダッシュすれば、1本遅い電車に乗っても遅刻せずに登校できる、という場合もあったのだとか。「電車に走り勝った」という満足感もあって広まったと考えられます。
しかし実際に移動してみると、ルート上には狭隘な生活道路や車通りが激しい幹線道路も多く、長めの信号待ちや、それによる時間ロスを織り込む必要もあります。また途中に流れる松川から、山の中腹にある伊那上郷駅までずっと上り坂が続きます。「下山ダッシュ」をクリアするには相当の脚力、持久力、そして交通法規を遵守する判断力も必要かもしれません。なお逆方向の伊那上郷駅→下山村駅ならば、ほぼ下り坂です。
わざわざ走らずとも、ゆっくり歩いて1本後の電車に乗り継ぐ「下山ウォーク」はいかがでしょうか。前述の通り電車は日中1時間に1~2本程度、松川・野底川沿いの桜並木を眺めながら30~40分かけてゆっくり歩けば、伊那上郷駅で次の電車に余裕を持って乗車できます。飯田高校生御用達の「高松パン」で「カステラサンド(パンにカステラを挟んでいる。なぜかカロリー表示がない)」を買い食いするなど、アニメの再現とはいきませんが、飯田の街を楽しむのも良いでしょう。
【了】
Writer: 宮武和多哉(旅行・乗り物ライター)
香川県出身。鉄道・バス・駅弁など観察対象は多岐にわたり、レンタサイクルなどの二次交通や徒歩で街をまわって交通事情を探る。路線バスで日本縦断経験あり、通算1600系統に乗車、駅弁は2000食強を実食。ご当地料理を家庭に取り入れる「再現料理人」としてテレビ番組で国民的アイドルに料理を提供したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」など。
コメント欄の「私はロボットではありません」ができすぎです
長野県内のアニメ、ゲームの聖地巡礼といえば古くは
おねがいティーチャー、おねがいツインズが松本や大町に聖地があって
2000年初頭頃には巡礼が行われていたと記憶していました。
乗り物ニュース的にも海無し県なのに海ノ口駅が聖地という点でご存知の方もいらっしゃるでしょうか。
それ以前に飯田に聖地のある作品があったとは、リアルタイム世代で無いこともあって不勉強でした。
しかし多分おねがい〜の方は巡礼して楽しんでいる人をネットで見たというのが一番大きいのでしょうね。
ネットの写真や口コミで、最初からそれを目的にして一人でひっそり訪ねた思い出を共有出来るようになった。
ネット普及前から巡礼されていた場所も掘り起こせば資源になるかも知れませんね。